京都大学 ウイルス・再生医科学研究所

多能性造血前駆細胞からリンパ球までの分化を方向付ける骨髄ニッチの同定

Ana Cordeiro Gomes1†、原崇裕2*、Vivian Y. Lim1†、Dietmar Herndler-Brandstetter1、Erin Nevius1、杉山立樹2,3、谷一靖江2、Susan Schlenner4、Ellen Richie5、Hans-Reimer Rodewald6、Richard A. Flavell1、長澤丘司2,3、生田宏一2、and Joao Pedro Pereira1*

Co-first author; *Correspondence author

(1 エール大学、2 京都大学ウイルス・再生医科学研究所、3 大阪大学大学院生命機能研究科、4 ルーベン大学、5 テキサス大学、6 ドイツ癌研究センター)

“Hematopoietic stem cell niches produce lineage-instructive signals to control multipotent progenitor differentiation”

Immunity (2017) 45:1219-1231. doi: 10.1016/j.immuni.2016.11.004

概要

骨髄の造血幹細胞(HSC)は、ケモカイン CXCL12 を発現する間葉系前駆細胞や内皮細胞が形成する HSC ニッチで自己複製します。一方で、造血幹細胞は多能性造血前駆細胞(MPP)、リンパ系共通前駆細胞(CLP)を経てB細胞を含む種々のリンパ球に分化していきます。しかし、この造血系細胞分化が骨髄内のどこで、どのように起きているのか明らかではありませんでした。

本研究では、様々な遺伝子改変マウスの骨髄を解析することで、MPP からリンパ球までの分化を支持する特異的なニッチが存在するのか調べました。CXCL12 の受容体である CXCR4 を MPP から欠損させたマウスでは、CLP への分化が抑制され、リンパ球造血能が低下しました。また、B 細胞分化に必須なサイトカイン IL-7 を産生するストローマ細胞(支持細胞)に対して、CLP は CXCR4 依存的に近接していました。さらに IL-7 産生性ストローマ細胞は、間葉系前駆細胞の約60%と少数の内皮細胞から成ることを見出しました。間葉系前駆細胞から IL-7 を欠損させたマウスでは、B 細胞の初期前駆細胞が減少し、内皮細胞から IL-7 を欠損させたマウスでは、プロ B 細胞およびプレ B 細胞が減少しました。また、IL-7 産生性ストローマ細胞から CXCL12 やサイトカイン SCF を欠損させたマウスでは、造血幹細胞と MPP の細胞数が減少しました。

以上の実験結果から、造血幹細胞ニッチを構成するストローマ細胞の中には、分化方向を決定するサイトカインを産生する亜集団が存在しており、これが MPP 以降の分化を支持する特異的なニッチを形成していることが明らかとなりました。今後、IL-7 産生性および IL-7 非産生性の骨髄ストローマ細胞の性質の違いを解析することで、骨髄ニッチによる造血制御メカニズムの詳細が明らかにされることが期待されます。


(A) IL-7+ CAR 細胞の分布。(B) IL-7+ CAR 細胞との距離。(C~F) IL-7Cre+ SCF cKOマウスの表現型 (C)。LeprCre+ IL-7 cKOマウスの表現型 (D, E)。Tie2Cre+ IL-7 cKO マウスの表現型 (F)。