京都大学 ウイルス・再生医科学研究所

グアニン四重鎖を介したH19長鎖非翻訳RNAの転写制御機構の発見

福原充子1,2、馬悦3、長澤和夫3、豊島文子1,2

1京都大学ウイルス・再生医科学研究所 生命システム研究部門組織恒常性システム分野、2京都大学生命科学研究科 高次生命科学専攻 細胞増殖統御学分野、3東京農工大学大学院工学府 生命工学専攻 生命有機化学講座)

“A G-quadruplex structure at the 5′ end of the H19 coding region regulates H19 transcription”

Scientific Reports 8:45815, 2017. DOI: 10.1038/srep45815.

概要

長鎖非翻訳RNAであるH19遺伝子は、古くから知られたインプリンティング遺伝子です。H19 RNAは発生中の多くの組織で発現しており、細胞の増殖や分化の制御に関わるとされていますが、H19の発現制御機構についてはインプリンティングのほかには、ほとんど知られていません。本研究では、H19の発現制御機構としてグアニン四重鎖を介した転写制御機構を見出しました。グアニン四重鎖とは、グアニンが豊富な核酸が取ることのできる高次構造で、テロメアやがん関連遺伝子によく見られることがわかっています。H19の転写開始点直後には進化的に保存された、グアニンに富んだ配列が存在しており、in vitroの実験からこの配列がグアニン四重鎖を形成していること、またこの配列が転写を制御していることが明らかになりました。さらに、H19グアニン四重鎖と結合する因子として二つの転写因子、Sp1とE2F1を同定しました。これらの因子は細胞周期や胚性幹細胞の分化といった細胞の状態によって、H19グアニン四重鎖との結合状態を変化させ、H19の発現量を正および負の両方向に制御していることを突き止めました。H19 RNAは多くのがん細胞で高発現し、細胞の増殖や浸潤を引き起こす原因となっていることからも、本研究で明らかになったグアニン四重鎖によるH19の発現調節機構は、エピジェネティックな機構を介した、がん治療の有効なターゲットとなることが期待されます。
なお、本研究は東京農工大学大学院工学研究院との共同利用・共同研究による成果です。