京都大学 ウイルス・再生医科学研究所

ほ乳類APOBEC3とレンチウイルスVifの進化的軍拡競争

中野雄介、麻生啓文、Andrew Soper、山田英里、森脇美優、Guillermo Juarez-Fernandez、小柳義夫、佐藤佳

京都大学ウイルス・再生医科学研究所システムウイルス学分野

“A conflict of interest: the evolutionary arms race between mammalian APOBEC3 and lentiviral Vif”

Retrovirology 2017 14:31 DOI: 10.1186/s12977-017-0355-4

概要

APOBEC3 遺伝子は、ほ乳類に共通してコードされる細胞性シチジン脱アミノ化酵素であり、レンチウイルスの複製を酵素活性依存的に抑制する機能を有しています。一方、レンチウイルスは、宿主の APOBEC3 による抗ウイルス効果を拮抗阻害するために、viral infectivity factor (Vif)という遺伝子を獲得することにより、この障壁を乗り越えてきました。最近の研究から、ほ乳類のAPOBEC3 遺伝子は進化とともに選択圧に晒されてきたこと、そして、その選択圧がレンチウイルスの Vif に起因することが明らかとなってきています。すなわち、ほ乳類のAPOBEC3 遺伝子は、レンチウイルスの Vif と共進化しており、それはほ乳類とレンチウイルスの「進化的な軍拡競争」の縮図であると理解できます。本総説論文では、APOBEC3 と Vif という中心視座において、ほ乳類(ヒトを含む霊長類、ネコ科動物、ウシ科動物、反芻動物)とそれぞれの外来性レンチウイルス(HIVなど)の進化的関連性を、包括的かつ詳細に解説しています。

※本研究成果は、科学技術振興機構CREST、日本医療研究開発機構AMED、日本学術振興会Core-to-Core Program A, Advanced Research Networksの研究成果です。


図 レンチウイルスVif遺伝子の系統樹. CST, cross-species transmission(種間伝播)