京都大学 ウイルス・再生医科学研究所

ステロイドが免疫力を高める?! – 免疫の新たな昼夜サイクルを解明 –

榛葉旭恒1,2、崔広為1、谷一靖江1,2、小川真1,2、阿部真也1,2、岡崎史恵1,2、北野さつき3、宮地均3、山田久方4、原崇裕1、吉開泰信4、長澤丘司5、Günther Schütz6、生田宏一1

(1京都大学ウイルス・再生医科学研究所免疫制御分野、2 京都大学医学研究科、3 京都大学ウイルス・再生医科学研究所マウス作製支援チーム、4 九州大学生体防御医学研究所、5大阪大学大学院生命機能研究科、6ドイツ癌研究センター)

“Glucocorticoids drive diurnal oscillations in T cell distribution and responses by inducing interleukin-7 receptor and CXCR4”

Immunity (2018) 電子版. doi: 10.1016/j.immuni.2018.01.004

概要

ステロイドホルモンのひとつであるグルココルチコイド(糖質コルチコイド、ステロイド)は、強い免疫抑制作用を持ち、抗炎症剤や免疫抑制薬としてさまざまな病気の治療に用いられています。グルココルチコイドの濃度は日内変動していますが、免疫機能との関係については今まで不明でした。生田宏一 ウイルス・再生医科学研究所教授と榛葉旭恒 同研究員らの研究グループは、大阪大学、九州大学、ドイツがん研究センターとともに、グルココルチコイドが免疫を担うTリンパ球の体内循環と免疫応答能の日内変動を制御し、免疫力を高めていることを明らかにしました。研究グループは、グルココルチコイドの濃度が日内変動することに着目し、一日の各時間帯におけるマウスのTリンパ球の変化を解析しました。その結果、グルココルチコイドが、Tリンパ球のサイトカイン受容体IL-7Rとケモカイン受容体 CXCR4 の発現量を夜間に高め昼間に下げていること、その日内変動が、昼間に血中に留まり夜間にリンパ組織に集まるTリンパ球の体内分布の日内変動を引き起こしていることがわかりました。さらに、Tリンパ球が夜間にリンパ組織に集まることにより、リンパ球がより効率的に活性化され、強い免疫応答が引き起こされることがわかりました。以上の結果から、免疫抑制作用で有名なグルココルチコイドが、生体内においてはTリンパ球の循環と応答の日内変動を制御することで、逆に免疫機能を高める働きをもつことが明らかになりました。今回発見したメカニズムは、不規則な生活によるグルココルチコイドの分泌の乱れが免疫力の低下をもたらす可能性を示唆します。また、今後は、気管支喘息などのアレルギーや関節リウマチなどの自己免疫疾患と日内変動の関係性について、さらなる研究に発展することが期待されます。


図 グルココルチコイドはIL-7RとCXCR4を誘導することでT細胞の分布と応答の日内変動を制御する