京都大学 ウイルス・再生医科学研究所

分節時計遺伝子の発現振動解析に有用なES細胞由来未分節中胚葉様組織の誘導

松宮 舞奈1,2、冨田 丈仁1,6、吉岡-小林 久美子1,3、磯村 彰宏1,4、影山 龍一郎1,2,3,5*

(1京都大学ウイルス・再生医科学研究所、2京都大学大学院生命科学研究科、3京都大学大学院医学研究科、4科学技術振興機構、5京都大学物質-細胞統合システム拠点)

“Development (2018) 145, dev156836”

Doi:10.1242/dev156836
<http://dev.biologists.org/content/145/4/dev156836>

概要

脊椎動物の脊椎や肋骨は、発生初期に現れる体節から分化します。体節は未分節中胚葉(presomitic mesoderm (PSM))の頭部側が周期的にくびれ切れることで形成され、この周期はマウスでは、時計遺伝子であるHes7によって制御されています。Hes7は個々の細胞内で発現振動(オシレーション)し、PSM全体で尾部から頭部方向へ波状の発現ダイナミクスを示すことが分かっています。マウス胎児PSMを用いた実験により、波状の発現ダイナミクスの形成には、隣接する細胞間同期機構の関与が示唆されていましたが、未だ詳細な分子メカニズムは明らかになっていません。
そこで、本研究グループは、生きた個体を使わず、ES細胞からPSM様組織 (induced-PSM : iPSM) へと、分化誘導する新たな実験系を確立しました。作製したiPSMは誘導72時間後から、Hes7の発現が上昇し、オシレーションが観察されました。さらに、iPSM全体で、波状の発現ダイナミクスが起こり、体節が形成されることから、iPSMは組織PSMと同様の能力と特徴を持つ事が示唆されました。
さらに、iPSMを用いて、80種類のエピジェネティクス関連ケミカルライブラリースクリーニングを行い、新規体節形成関連遺伝子としてBET family因子がHes7のオシレーション維持に関わっている可能性を発見しました。


図. iPSMにおけるHes7発現ダイナミクスと体節形成
(A)時間経過におけるHes7発現パターンの変化 矢印はHes7発現オシレーションの方向を示す。(B) Hes7オシレーションの位相変化  (C)体節形成時の明視野画像