京都大学 ウイルス・再生医科学研究所

LPS刺激に応答するマウス樹状細胞におけるクロマチン修飾に見られる波状パターン

Alexis Vandenbon1,2$*, 熊谷 雄太郎3,4$, 林 もんじぇ5, 鈴木 穣5, 中井 謙太6*

(1京都大学ウイルス・再生医科学研究所、2京都大学国際高等教育院、3大阪大学 免疫学フロンティア研究センター、4国立研究開発法人産業技術総合研究所, 創薬基盤研究部門、5東京大学 大学院新領域創成科学研究科、6東京大学 医科学研究所)($ Equal contribution) * 責任著者 Email: alexisvdb*infront.kyoto-u.ac.jp,  knakai*ims.u-tokyo.ac.jp. (*を@に変えてください)

Waves of chromatin modifications in mouse dendritic cells in response to LPS stimulation

Genome Biology (2018),  link     DOI: 10.1186/s13059-018-1524-z

 

概要

背景:転写因子とエピジェネティックな修飾の遺伝子発現制御における重要性は広く知られているにもかかわらず、外部からの刺激に応答しての転写因子のDNAへの結合、ヒストン修飾、遺伝子発現の3者の間の因果関係はよくわかっていない。我々は、樹状細胞がリポ多糖(LPS)による刺激に応答する時に、これらの変化の順番をゲノムワイドに解析した。

結果:ChIP-seq の時系列データを用いることで、LPS によって誘導される異なったヒストン修飾の蓄積が明らかに異なったパターンを持つことを見出した。H3K4me3 の増加は転写の活性化と同時に起こっているように見える一方、H3K9K14ac は刺激後すぐに増加し、H3K36me3 は遅い時点で増加した。我々は転写因子の結合データと統合的に解析することで、転写因子の活性化とヒストン修飾の間の関係性を見出した。特に、LPS によって誘導される H3K9K14ac と H3K4me3 は転写因子 STAT1/2 の結合に伴い起きており、STAT1 の欠損により著しく障害された。

結論:いくつかのヒストン修飾の短時間での変化は転写活性の変化と同時に起こる一方、そうでないヒストン修飾変化の存在が示された。後者の変化は転写活性の変化よりも、刺激誘導性の転写因子の厳密な制御と、それら転写因子とクロマチン修飾因子との相互作用を反映していると考えられる。

図1:Il6 プロモーター付近における転写活性、H3K9K14ac, H3K4me, H3K36me3 のタイミングの違い。LPS刺激によって 0.5h 程度で非常に早い転写が誘導され、同時に H3K9K14ac の蓄積も始まる。H3K4me3 は刺激後1-2時間で増加し始める。最後に H3K36me3 がプロモーターで刺激後6h程度と遅く増加し始める。この順番はゲノムワイドな傾向として見られる。

 

図2:(左)結果の概念図。刺激後、遺伝子は不活性なクロマチン状態から活性な状態へと変化する。この変化において、異なるヒストン修飾がそれぞれ異なるパターンを持って起こる。変化のタイミングは一次的な制御因子、二次的な制御因子に依存する。(右)例として、LPS によって誘導される H3K9K14ac は特に STAT1 結合部位の周りで強く、STAT1欠損細胞においてはそのシグナルは完全に消失することを見出した。このように、STAT1 の結合は H3K4K19ac の場所とタイミングを決定している。