京都大学 ウイルス・再生医科学研究所

アポトーシス可視化のためのモレキュラービーコン内包カチオン化ゼラチンナノ粒子の作製

村田勇樹、城潤一郎、田畑泰彦

(京都大学ウイルス・再生医科学研究所 生体材料学分野)

“Preparation of cationized gelatin nanospheres incorporating molecular beacon to visualize cell apoptosis”

Scientific Reports  (2018),  DOI: 10.1038/s41598-018-33231-2

 

概要

細胞移植治療は再生医療において広く用いられる治療法の一つである。しかし、その治療メカニズムは未だ不明点が多い。細胞移植治療のさらなる発展のためには、移植細胞の生体内における分布、およびその生物機能を非侵襲的に可視化するイメージング技術の研究開発が必要不可欠である。モレキュラービーコン(MB)は、細胞内で様々な生物機能を制御するmRNAを汎用的に可視化する核酸イメージングプローブである。そこで、MBを細胞内に効率よく導入し、その細胞内動態を制御することで、細胞の生物機能を可視化することを試みた。本研究では細胞の生物機能として、生存機能(=細胞死)に着目し、代表的な細胞死であるアポトーシスの可視化を目的とした。アポトーシス細胞でのみ特異的に発現するカスパーゼ-3のmRNAに対するMBを設計し、生体吸収性高分子であるゼラチンからなるナノ粒子にMBを内包させることで、MB内包ゼラチンナノ粒子を作製した。得られたナノ粒子は、配列特異的にターゲットmRNAを検出し、ヌクレアーゼ分解への耐性をもつことがわかった。マウス間葉系幹細胞に作製したナノ粒子を添加し、続いて、代表的なアポトーシス誘導剤であるカンプトテシンを添加したところ、アポトーシス誘導後でのみ細胞から蛍光が観察された。これは、MB内包ゼラチンナノ粒子が効率よく細胞に取り込まれ、アポトーシス誘導によって増加したカスパーゼ-3のmRNAと特異的に反応したためであると考えられる。また、従来的なアポトーシス解析方法では検出できなかった、比較的低濃度のカンプトテシンによるアポトーシスも、感度よく可視化することができた。本研究によって得られた成果は、アポトーシスに留まらず、様々な生物機能を可視化するための基盤技術となることが期待される。