京都大学 ウイルス・再生医科学研究所

平成29年5月29 日に京都大学ウイルス・再生医科学研究所第3回生命情報研究会を開催しました。

 生命システム研究は、旧ウイルス研究所と旧再生医科学研究所が統合した本研究所が新たに取り組む主要課題のひとつです。そこで、平成29年5月29日に京都大学国際科学イノベーション棟5階シンポジウムホールで、第3回生命情報研究会を開催しました。
 当日は、開祐司ウイルス・再生医科学研究所所長の研究所の取り組む課題についての紹介に続いて、5人の理化学研究所(以下理研と略します)の若手研究者による講演がありました。まず、生命システム研究センターの谷口雄一博士より独自に開発された手法から、染色体遺伝子の巻きつきの開始と終了位置の情報から配向まで見える超高分解能のヌクレオソーム解析手法が紹介されました。遺伝子座ごとのヌクレオソームの配列構造や、染色体のループ構造より小さなスケールモチーフがあることがわかってきました。次に理研情報基盤センターの川路英哉博士からは、理研が開発したFANTOM5国際共同研究プロジェクトの最新の話題でした。ヒト細胞の転写開始点を明らかにするCAGE法によって、これまで想定されていたプロモーターやエンハンサーという遺伝子制御領域やノンコーディングRNAのゲノムワイドにおける多様性が紹介されました。理研医科学イノベーションハブ推進プログラムの川上英良博士からは、医学・生物学研究におけるビックデータから複雑な生命現象を理解するというデータ駆動型アプローチとその具体例を紹介されました。ネットワーク解析手法を用いて制御因子の予測が可能になったことや、機械学習法を用いて手術後の経過を予測するために術前データに隠されていた検査項目を見つけた事例、そして時系列データの解析を通じて医学・生物学における未来予測に踏み込める取り組みが紹介されました。理研生命システム研究センターの森下喜弘博士からは、生物の発生過程における器官形成過程を定量化し、幾何モデルの作成を通じて、発生過程のいつ、どこで、何が、どのように組織の変形・力学場に影響を与えているか明らかにされつつある事例が紹介されました。大脳や心臓の発生分化過程における、その特徴的形態形成の理論化の具体例のお話がありました。最後に理研イノベーション推進センターの村川泰裕博士によりRNAの生と死(すなわち合成と分解)に関わる遺伝子発現制御機序について、博士が開発された新生鎖RNAを特異的に検出する手法が紹介されました。この解析より不安定なRNAが高感度に検出され、複雑な遺伝子発現の機序と網羅的な解析からDNA配列情報に新たな意義を見出されたお話をされました。これらの内容は、網羅的遺伝子の解析が高解像ならびに高感度になり遺伝子発現に関わる経路がこれまでに考えられている以上に多様性に富むこと、医学・生物学統計による生命の予測についての概念が今後大きく変わる可能性など、極めて刺激的な内容でした。本研究会には68名が参加し、医学・生命科学研究の発展に、分子生物学はもちろん、情報学、統計学、数学がどのように貢献するのか、熱心な議論が行われました。最後に、小柳義夫ウイルス・再生医科学研究所副所長が、これほどの高解像度にまで明らかにできる学問の新展開についての大きな期待を述べて閉会となりました。数学と生命医科学の融合という異分野融合をさらに推進するきっかけとなる研究会になりました。なお、九州大学の岩見真吾先生の講演は、海外出張先からの飛行機が飛ばずに到着が遅れられたために聞けませんでした。

* 第3回生命情報研究会のポスターはこちらをご覧ください。