京都大学 ウイルス・再生医科学研究所

ウイルス研究の潮流シリーズセミナー:植物ウイルスのもつ社会システムを、実験と数理モデリングで覗き見る

日時: 2017年6月28日 (水)16:00 〜 17:30
場所: 京都大学ウイルス再生研2号館(旧ウイルス研本館)1階セミナー室
演者: 宮下 脩平 博士 東北大学大学院農学研究科植物病理学分野 助教
演題: 植物ウイルスのもつ社会システムを、実験と数理モデリングで覗き見る

講演要旨

RNAウイルスは、ゲノム複製における変異率が高いことが知られている。高い変異率は新しい環境に適応した変異体を確率的にもたらすが、一方で、ランダムな塩基置換の大半はウイルスの複製・蓄積に負の影響を与えることも報告されている (Sanjuan et al., PNAS, 2004)。ウイルスの場合、そのようなできそこないの変異型ゲノムであっても、宿主細胞内に共存する他のウイルスゲノムの遺伝子産物を利用して「フリーライダー」として集団内に生き残る可能性が存在する。これはウイルスにとって重要な「社会問題」となりうるが、ウイルスはこの問題をどのように解決しているのだろうか。演者らはこの疑問に答えるため、分子レベル・細胞レベル・個体レベルの実験と、それら多階層をつなぐ数理モデルを用いたシミュレーションを組み合わせて研究を進めている。
セミナーではまず、植物ウイルスが宿主組織内で感染を拡大する際に、4~6程度のMOI (multiplicity of infection)で新しい細胞に感染することを示した実験結果を紹介する。次にそのように小さいMOIでの感染が上述の「社会問題」の解決に寄与する可能性を示したシミュレーションを紹介する (Miyashita and Kishino, J Virol, 2010)。また、(+)鎖RNAウイルスの細胞感染過程のシミュレーション(Miyashita et al., PLOS Biol, 2015)のほか、その知見に基づいて行ったMOIの進化シミュレーションについても紹介する。この進化シミュレーションの結果は、実験で観察される4~6程度のMOIがウイルスにとって最適であることを理論的に裏付けるものであった(unpublished results)。
また演者らは最近、フリーライダーをさらに効率よく排除するための別のシステムとして、ウイルスが多数決型の意思決定を採用している可能性を、実験と数理モデリングにより明らかにした (unpublished results)。これについても詳しく紹介したい。

主催 京都大学ウイルス・再生医科学研究所
世話人 システムウイルス学分野 小柳義夫 (Tel:751-4813)