京都大学 ウイルス・再生医科学研究所

第1301回 リボソームから伸びるRNA触手の役割

日時: 2018年12月7日 15:00~16:30
場所: 京都大学 ウイルス再生研2号館(旧ウイルス研本館) 1階 セミナー室
演者: 藤井 耕太郎 博士 Research Associate, Department of Developmental Biology and Genetics, Stanford University
演題: リボソームから伸びるRNA触手の役割

講演要旨

生物のセントラルドグマにおいて遺伝情報を正確に保つことは複製、転写、翻訳どの段階でも不可欠であるが、翻訳段階でのエラー確率は10-4とmRNAの転写(10-5)やDNA複製(10-6)と比較して高い。mRNA翻訳は核酸配列からアミノ酸配列へと変換する複雑な反応であり、 不正確なタンパク質合成は凝集を引き起こし、ときには神経変性疾患を引き起こす。哺乳類など複雑な生物ほど翻訳の正確性が高いと言われているが、どのように正確性を上昇させているかは知られていない。

ヒトのリボソームは原核生物のリボソームの2倍の大きさになり、その大部分は30ものExpansion Segments (ESs)と呼ばれる真核生物に特異的なrRNA領域の挿入による。大きなESsは触手のようにリボソームから伸びており、ヒトでは700ntにもなる。我々は酵母の遺伝学を用いて27番目のES (ES27L) (159nt)を特異的に加工し、ES27Lを欠いたリボソームはアミノ酸のミスインコーポレーション、フレームシフト、終始コドンのリードスルーが増え、ES27Lが翻訳の正確性に関わっていることを明らかにしてきた。さらに分子機構を明らかにするため、定量的質量分析を用いてES27Lに依存してリボソームにリクルートされる分子を同定した。全てのタンパク質合成はメチオニンから始まるが、8割以上のタンパク質から翻訳中にメチオニンが除去される。 全ての生物で保存されているメチオニンアミノペプチダーゼ(MetAP)がES27L-RNA scaffoldに依存して真核生物のリボソームにリクルートされ、新生タンパク質のメチオニン除去の効率を上げることで翻訳の正確性を向上させていることを明らかとした。より複雑なプロテオームの機能性を確保するために、リボソームの触手が進化の過程で獲得してきた役割を考察する。

(言語:日本語 / Language : Japanese)

 

 

主 催 京都大学ウイルス・再生医科学研究所
連絡先 RNAシステム分野  北畠 真

(TEL:075-751-3993)