京都大学 ウイルス・再生医科学研究所

宿主がHIV-1感染を抑制する新たなメカニズムの解明

宿主がHIV-1感染を抑制する新たなメカニズムの解明
―N4BP1によるRNA分解とその調節がウイルス再活性化を調節する―

山岨大智1,2,3、佐藤佳4,5、市野瀬拓也1、今村智子3、Lennart Koepke6、Simone Joas6、Elisabeth Reith6、Dominik Hotter6
三沢尚子4、赤木宏太朗1,2、植畑拓也1,2、三野享史1,2、宮本翔7、野田岳志7、山下暁朗8、Daron M. Standley9、Frank Kirchhoff6、Daniel Sauter6、小柳義夫4、竹内理1,2

(1 京都大学大学院医学研究科医化学分野、2 京都大学ウイルス・再生医科学研究所感染防御分野、3 京都大学生命科学研究科、4 京都大学ウイルス・再生医科学研究所システムウイルス学分野、5 東京大学医科学研究所、6 Ulm University、7 京都大学京都大学ウイルス・再生医科学研究所微細構造ウイルス学分野、8 横浜市立大学医学部、9 大阪大学微生物病研究所)

 

N4BP1 restricts HIV-1 and its inactivation by MALT1 promotes viral reactivation

Nature Microbiology (2019) https://doi.org/10.1038/s41564-019-0460-3

https://rdcu.be/bEAuB

概要

本研究では、エイズ発症の原因となるヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)の感染を抑制する新たな宿主タンパク質としてN4BP1を同定し、その分子メカニズムを明らかにしました。
HIV-1は宿主細胞に侵入後、組み込まれたウイルスゲノムDNAからウイルスmRNAを転写し、新たなウイルス粒子を産生、感染を拡大します。宿主には、HIV-1感染を抑制する免疫機構が存在しますが、これまでウイルスmRNAを標的とした防御機構は分かっていませんでした。

本研究では、HIV-1感染を抑制する新たな宿主因子としてN4BP1を同定しました。N4BP1はCD4陽性T細胞などHIV-1感染標的細胞で、ウイルスmRNAと結合し、これを分解することで、HIV-1感染を抑制しました。しかし、活性化CD4陽性T細胞ではN4BP1が宿主タンパク質分解酵素MALT1(*3)により分解され、その機能を失うことが明らかとなりました。また、HIV-1潜伏感染細胞においては、MALT1でN4BP1が分解されることが、HIV-1の再活性化に寄与することが分かりました。本研究は、今後の抗HIV-1ウイルス療法の進展や、潜伏感染細胞の根絶療法の開発へと発展することが期待されます。

 

図:N4BP1によるHIV-1mRNA分解とその制御モデル