京都大学 ウイルス・再生医科学研究所

核内構造体パラスペックルの形成における新たな制御機構の解明

町谷 充洋1,2、谷口 一郎1、大野 睦人1

(1 京都大学 ウイルス・再生医科学研究所、2 国立がん研究センター研究所)

 

”ARS2 regulates nuclear paraspeckle formation through 3’-end processing and stability of NEAT1 long non-coding RNA”

Molecular and Cellular Biology (2019)

概要

   長鎖ノンコーディングRNAであるNEAT1は、多数のRNA結合タンパク質と相互作用し、パラスペックルと呼ばれる核内構造体の骨格として機能していることが知られています。NEAT1には3’末端の選択的プロセシングによって作られる2つのアイソフォーム (NEAT1_1、NEAT1_2) があり(図1)、長いアイソフォームのNEAT1_2がパラスペックルの形成に重要です。これまでに、この選択的プロセシングは、転写されたNEAT1前駆体にポリ(A)の尾の付加に先立ってRNAの3’側を切断する因子のひとつCFIm (cleavage factor I)がNEAT1_1の3’端にあたる部位にリクルートされるかどうかで制御されていると報告されていました。
   本研究では、このNEAT1へのCFImのリクルートに、キャップ構造に結合するCBC (cap binding complex)を介してRNAに結合するARS2という因子が関与することを明らかにしました。ARS2は、CFImと相互作用し、NEAT1へCFImをリクルートすることで、短いアイソフォームのNEAT1_1の産生を促進しました。一方で、ARS2の発現を抑制した細胞では、このプロセシングが行われず、NEAT1の転写が継続するため、長いアイソフォームのNEAT1_2の発現量が増加していました。また、ARS2はNEAT1の選択的プロセシングだけではなく、NEAT1の分解にも関わることが明らかになりました。このように、ARS2は、パラスペックルの形成に重要であるNEAT1_2の発現を制御することで、パラスペックルの形成を制御していることが示されました(図2)。
   今後はARS2や他のキャップ関連タンパク質が、NEAT1だけでなく、他のノンコーディングRNAの選択的プロセシングや安定性に関与しないか、研究を進めていきたいと考えています。

 

図1:NEAT1の2つのアイソフォーム

 

図2:ARS2によるNEAT1の発現制御モデル