京都大学 ウイルス・再生医科学研究所

リソソームが成体神経幹細胞を制御するメカニズムを解明

小林妙子1-3,朴文惠1,3、高村俊哉1、郡宏4、宮地均1、北野さつき1、岩本由美子1、山田真弓1,3,5、今吉格1,3,5、塩田清二6、Andrea Ballabio7、影山龍一郎1-3,5

(1 京都大学ウイルス・再生医科学研究所、2 京都大学大学院医学研究科、3 京都大学生命科学研究科、4 東京大学大学院、5 京都大学物質-細胞統合システム拠点(iCeMS)、6 星薬科大学、7 Telethon遺伝医学研究所(イタリア))

 

”Enhanced lysosomal degradation maintains the quiescent state of neural stem cells”
Nature Communications (2019) doi.org/10.1038/s41467-019-13203-4

概要

   大人の神経幹細胞は脳内の海馬歯状回や側脳室の周辺領域にわずかに存在していますが、そのほとんどが増殖や分化を停止した休眠状態にあります。休眠状態の神経幹細胞は活性化されて再び増殖を始めた状態(「活性化状態」)になると、分化して成熟ニューロンを作り出すことができます。「休眠状態」は、一生涯という長い期間に渡って脳内に神経幹細胞を維持するために必須のメカニズムです。様々なシグナル伝達経路が神経幹細胞の増殖・休眠を制御することが報告されていますが、細胞内のタンパク質恒常性の変化については明らかになっていません。
   本研究グループは、細胞内のタンパク質恒常性を制御するタンパク質分解に着目して解析を行いました。これまでに脳室周囲の休眠神経幹細胞にリソソームが多く存在することは報告されていましたが、「休眠状態」にリソソーム機能がどのような役割を持つのかについては、全く明らかにされていませんでした。リソソームは細胞内で様々な物質の分解を行う細胞内小器官であり、エンドサイトーシスによって細胞内に取り込まれた膜受容体を分解します。本研究グループは、増殖している神経幹細胞が休眠状態に入る際に細胞内のリソソーム活性が上昇すること、休眠状態ではリソソーム活性の上昇により増殖シグナル伝達に関わる膜受容体が速やかに分解されることを見いだしました。また、リソソームの働きを阻害すると神経幹細胞は休眠状態を脱すること、逆にリソソーム活性を人工的に上昇させると神経幹細胞は増殖をやめて休眠状態に入ることを見いだしました。この成果により本研究グループは、リソソーム活性が成体神経幹細胞の重要な制御因子であることを明らかにしました。

図1:本研究のイメージ図(イラスト:高宮泉水 iCeMS特定助教)