京都大学 ウイルス・再生医科学研究所

インターロイキン7受容体下流シグナルの競合によるT細胞の制御機構を解明

崔広為1、榛葉旭恒1,2、馬広勇3、高原和彦4、谷一靖江1,2、朱媛博1,2、旭拓真1,2、阿部昌史1、宮地均5、北野さつき5、原崇裕1、安永純一朗3,6、諏訪内浩紹7、山田久方8、松岡雅雄3,6、植木浩二郎9、吉開泰信8、生田宏一1

(1京都大学ウイルス・再生医科学研究所免疫制御分野、2 京都大学医学研究科、3 京都大学ウイルス・再生医科学研究所ウイルス制御分野、4 京都大学生命科学研究科、5 京都大学ウイルス・再生医科学研究所マウス作製支援チーム、6 熊本大学生命科学研究部、7 東京医科大学病院、8 九州大学生体防御医学研究所、9 国立国際医療研究センター)

“IL-7R-dependent phosphatidylinositol 3-kinase competes with the STAT5 signal to modulate T cell development and homeostasis”

Journal of Immunology (2020) 204: 844-857. doi: 10.4049/jimmunol.1900456

 

概要

インターロイキン7(IL-7)はT細胞、B細胞、自然リンパ球の分化と恒常性維持に必須なサイトカインである。IL-7受容体(IL-7R)のシグナル伝達において、STAT5とPI3キナーゼが重要な役割を担っている。しかし、この2つの因子がどのようにIL-7シグナルを制御し、機能を発揮するのかは明らかにされていなかった。本研究では、IL-7Rの449番目のチロシン残基がSTAT5とPI3キナーゼとの結合と活性化に必要であること、452番目のメチオニン残基がPI3キナーゼとの結合に必要であることに着目し、2種類のIL-7R点変異マウスを作製した。STAT5とPI3キナーゼの両方のシグナル伝達が障害されるIL-7R-Y449Fマウスと、PI3キナーゼのシグナル伝達が低下するIL-7R-M452Lマウスである。IL-7R-Y449Fマウスでは、STAT5とPI3キナーゼシグナルが障害されたことにより、T細胞分化や生存に関わる遺伝子の発現が低下し、その結果T細胞が大きく減少した。一方、IL-7R-M452Lマウスでは、PI3キナーゼシグナルが障害されただけではなく、STAT5シグナルが著しく亢進した。したがって、STAT5とPI3キナーゼの間に競合的なシグナル伝達が起きていると考えられた。さらに、IL-7R-M452Lマウスの解析により、この競合的なシグナルが初期T細胞の分化、末梢T細胞数の維持、Th17細胞とメモリーCD8 T細胞の分化を調節していることを見出した。以上の解析により、IL-7Rの下流シグナルにおいてSTAT5とPI3キナーゼが競合的な関係にあり、この競合性がT細胞の分化と維持を適切に制御していることを明らかにした。

 

図 インターロイキン7受容体下流シグナルの競合によるT細胞の制御