京都大学 ウイルス・再生医科学研究所

DNA損傷応答におけるRNA輸送因子の新たな機能を解明

町谷充洋1,2、谷口一郎1、マクロースキー亜紗子1、鈴木達也1、大野睦人1
(1 京都大学ウイルス・再生医科学研究所RNAシステム分野、2 国立がん研究センター研究所)

“The RNA transport factor PHAX is required for proper histone H2AX expression and DNA damage response”

RNA. (2020) doi: 10.1261/rna.074625.120

概要

化学物質や紫外線によりDNAに損傷を受けた細胞は、速やかにDNA損傷チェックポイント機構が働き、損傷したDNAが修復される一方で、修復できない場合にはアポトーシスにより排除されます。近年、このDNA損傷応答にいくつかのRNA結合タンパク質が関与し、重要な役割を担っていることが報告されています。当研究室では、これまでに核内で転写されたRNAに形成されるRNA核外輸送複合体に着目し、RNA輸送因子であるPHAXが、RNA polymerase IIによって転写されたU snRNAのキャップ構造にCBC (Cap Binding Complex) とともに結合し、核外輸送因子CRM1を呼び込むことで、U snRNAの輸送に重要な役割を担っていることを明らかにしてきました。しかしながら、RNAの輸送以外の現象にPHAXが関わるかは未解明でした。

本研究では、PHAXが、ヒストンH2AX mRNAの転写、及び、核外輸送制御を介して、DNA損傷応答に関わることを明らかにしました(図)。PHAXをノックダウンした細胞をUV照射したところ、DNA損傷応答の阻害、生存率の低下が見られました。詳細に解析したところ、DNA損傷応答に関わるリン酸化histone H2AXの発現に、PHAXが必要であることが明らかになりました。また、PHAXはhistone H2AX mRNAの転写・核外輸送を制御することで、DNA損傷時のリン酸化histone H2AXの発現に関わっていました。

今後はhistone H2AXだけでなく、他のhistone mRNAの転写・輸送におけるPHAXの関与を詳細に解析し、その制御機構を解明したいと考えています。