京都大学 ウイルス・再生医科学研究所

オルソボルナウイルスのエンベロープタンパク質の最適な発現調節がウイルス粒子の産生効率を決定する

酒井まどか1,2藤田陽子3,4、小森園 亮1、神田雄大1,5、小松弓子1,6、野田岳志3,4、朝長啓造1,2,5、牧野晶子1,2
(1京都大学ウイルス・再生医科学研究所 RNAウイルス分野、2京都大学大学院生命科学研究科 生体動態制御学分野、3京都大学ウイルス・再生医科学研究所 微細構造ウイルス分野、4京都大学大学院生命科学研究科 微細構造ウイルス分野、5京都大学大学院医学研究科 分子ウイルス学分野、6京都大学K-CONNEX)

Optimal Expression of the Envelope Glycoprotein of Orthobornaviruses Determines the Production of Mature Virus Particles.

J Virol. (2021) 95(5):e02221-20  doi: 10.1128/JVI.02221-20

概要

持続感染を特徴とするボルナ病ウイルス1型(BoDV-1)を用いたエピゾーマルRNAウイルスベクター(REVec)は、長期に安全に遺伝子を発現させることができる新規のウイルスベクターである。本研究では、REVecの導入効率を向上させるためにBoDV-1を含むオルソボルナウイルス属のエンベロープ糖タンパク質(G)の感染性ウイルス粒子の産生に果たす役割の評価を行った。G欠損REVec (ΔG-REVec) を用いたシュードタイプアッセイにおいて、BoDV-1 Gの過剰発現はGタンパク質の細胞内での成熟を阻害し、力価の低いREVecを産生させることが明らかとなった。また、細胞内での未成熟な Gの発現は、成熟GとウイルスゲノムRNAの粒子への取り込みを阻害することも示された。一方、Gタンパク質の過剰発現によるウイルス粒子産生への影響は、哺乳類と鳥由来のオルソボルナウイルス間で良く保存されていたが、カナリアから分離されたボルナウイルス、CnBV-1のGでは、過剰発現によっても感染性ウイルス粒子の産生効率は損なわれずに、高力価のREVecを産生できることが示された。解析の結果、CnBV-1 Gのシグナルペプチド領域が成熟したGの効率的な発現に関与していることが明らかとなった。さらに、CnBV-1 G遺伝子を持つキメラ型REVecは、iPS細胞を含むヒト由来細胞へ高い導入効率を示すことが確認された。以上の結果から、オルソボルナウイルスは感染細胞内でGの発現を最適に調節することで感染性粒子の産出効率を制御していることが示された。本研究成果は、オルソボルナウイルスの粒子産出についての理解を深めるだけではなく、REVec産生システムと力価の改善に貢献すると考えられた。