京都大学 ウイルス・再生医科学研究所

免疫反応について 2020年10月26日

COVID19の症例に関して、なぜ無症候あるいは軽い呼吸器症状例から肺機能の重症化に伴う死亡例まで違いがあるのかは、その人の免疫反応にヒントがありそうです。
亡くなられたアメリカの患者さんの解剖試料の解析結果(Loss of Bcl-6-expressing T follicular helper cells and germinal centers in COVID-19 https://doi.org/10.1016/j.cell.2020.08.025)があります。それによると胸部リンパ節や脾臓というリンパ組織において、抗原特異的B細胞の成熟化に重要なリンパ濾胞(germinal center, GC)の形成不全があり、BCL-6という長期抗体産生成熟B細胞への分化に必須の転写因子の発現がほとんどみられないとあります。GCが形成されていない理由はわかりません。感染者の一部の人では、このB細胞の成熟不全のためにせっかくできたウイルス感染を抑える中和抗体が早期に減少・消失するのを説明できますし、最近、香港、オランダ、ベルギーで相次いで見つかった再感染事例を説明するかもしれません。現在のところ20例以上の再感染例があるようです。無症候あるいは軽症者のCD4 ならびにCD8 T細胞の免疫反応の違いを報告した論文(Robust T cell immunity in convalescent individuals with asymptomatic or mild COVID-19 https://doi.org/10.1016/j.cell.2020.08.017 )など、このウイルス感染症ではこれまでの常識を越えた免疫反応をヒトに起こしているのかもしれません。図1と図2は新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスのウイルス検出と抗体の推移を比較したものです。発症前2日ぐらいから排出期がある新型コロナウイルスの感染様式がこれほど感染を拡大させるひとつの要因だといわれます。インフルエンザウイルスの排出期が発症期とほとんど一致するのと明らかに違います。(文責 小柳)

図1.新型コロナウイルスのウイルス感染の検出と抗体の推移

図2.インフルエンザウイルス感染の検出と抗体の推移