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2024年8月23日
【ウイルス学の潮流セミナー2024】ヘルペスウイルス病態発現機構の最先端知見
日時: 2024年8月23日(金)16:00~17:30
場所: 京都大学医生物学研究所 医生研1号館1階会議室(134)
演者: 加藤 哲久 博士
東京大学医科学研究所 ウイルス病態制御分野 准教授
演題: ヘルペスウイルス病態発現機構の最先端知見

講演要旨

ヘルペスウイルスは、4 億年以上の共進化を経て、宿主と洗練されたバランスを確立している。しかしな
がら、単純ヘルペスウイルス1 型(HSV-1)が引き起こすヘルペス脳炎は、例外的に致死的な疾患である。こ
のことは、進化上、HSV-1 が、中枢神経系組織(CNS)における宿主免疫応答を回避する分子機構やCNS とい
う特殊な環境下でもウイルス増殖を促進する分子機構を獲得してきたことを示唆している。すなわち、CNS
における宿主免疫回避機構やCNS 特異的なHSV-1 増殖機構の解明は、ヘルペス脳炎の病態の理解、そして、
新たな治療戦略の立案に直結することが期待される。
最近、我々は、大規模リン酸化プロテオーム解析を突破口に、CNS において宿主シチジデアミナーゼAPOBEC1
が内因性免疫実行因子としてHSV-1 増殖を阻害する一方、HSV-1 はウイルス特異的なウラシル-DNA-グリコ
シダーゼ(vUNG)のリン酸化制御機構を利用しAPOBEC1 と拮抗すること、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター
を用いて、APOBEC1 による抗HSV-1 活性の抑制を解除すると、マウスモデルにおけるヘルペス脳炎が著しく
阻害されることを解明した。また、我々は、独自に開発した非標準ウイルス遺伝子解読法により、HSV-1 が
コードする11 種の非標準的な新規ウイルス遺伝子を解読し、2 つの新規HSV-1 遺伝子が、CNS 特異的にウイ
ルス増殖を促進する神経病原性因子をコードすることも解明した。さらに、一連の独自の知見を基盤とし、
生物学のドグマを逸脱した非標準的な翻訳機構やHSV-1 潜伏感染を促進するセリン・スレオニンプロテイ
ンキナーゼ新規制御機構が明らかとなりつつある。本発表では、一連のヘルペスウイルス病態発現を司る新
規分子メカニズムに関する最新知見を紹介する。

 

主催 :JSPS 研究拠点形成事業Core-to-Core Program「ウイルスの二面性の理解・活用のための国際研究拠点形成」
共同利用・共同拠点「ウイルス・幹細胞システム医生物学共同研究拠点」
世話人:京都大学医生物学研究所 微細構造ウイルス学分野 野田 岳志