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2019年6月5日
ウイルス研究の潮流シリーズセミナー:臨床検体を軸とするウイルス感染症の病理学研究
日時: 2019年6月5日 (水)16:00~17:30
場所: 京都大学ウイルス再生研2号館 (旧ウイルス研本館)1階セミナー室
演者: 鈴木 忠樹 先生 (国立感染症研究所 感染病理部 室長)
演題: 臨床検体を軸とするウイルス感染症の病理学研究

講演要旨

ウイルス感染症の病理学研究は、「疾病とウイルスの関係性を明らかにする」ことと、「ウイルス感染により疾病が発生する機構を明らかにする」研究に大別される。前者はウイルス感染症という病気の病因(etiology)に焦点を当てる研究であり、後者はウイルス感染症の発生機序(pathogenesis)に焦点を当てる研究であるが、いずれにしても、ウイルスという病原体ではなくウイルス感染の結果として発生する病気に興味の主座があることが、ウイルス感染症の病理学研究の特徴と言える。よって、ウイルスそのものの性質を理解しようとするウイルス学的な研究とは、対象が同じであってもそのベクトルが異なっており、研究対象へのアプローチも独特である。

現在、我々の研究室では「感染症の病理」を標榜してウイルスに限らず様々な病原体を対象に病理学研究を進めているが、これらの中で最も重要視していることは、感染症患者やワクチン接種者由来の臨床検体を軸とするアプローチである。臨床検体は、実験室内でコントロールされたウイルスや細胞、動物とは異なり、背景が均一ではなく、解析結果を読み解くことも簡単ではない。しかし、臨床検体の中で観察される事象は、それがどんなに稀有なことであっても実際に患者体内で起こっている紛れもない真実であり、それを正確に読み解くことこそが疾病の病因と発生機序解明を目指す病理学研究の根幹となる。

本講演では、新興ウイルス感染症であるジカウイルスやSFTSウイルス感染症の病理学研究と、病理学研究の知見を土台として発展させてきたインフルエンザに対する新規予防法の開発研究を題材として、我々が実施している臨床検体を軸とするウイルス感染症の病理学研究のコンセプトと方向性について紹介する。

(言語:日本語 Language: Japanese)

主催 京都大学ウイルス・再生医科学研究所
世話人 微細構造分野 野田 岳志(TEL:075-751-4020)