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2020年2月18日
2020年2月14日に第7回個体の中の細胞社会学ワークショップを開催しました。

2020年2月14日に第7回個体の中の細胞社会学ワークショップを開催しました。

大阪大学大学院生命機能研究科の青木一成氏は「ヒトCXCL12-abundant reticular(CAR)細胞の同定と疾患におけるCAR細胞変容の意義」と題して、成体の造血幹細胞の維持に関わるCAR細胞のヒトでの機能解析と血液疾患との関わりについて講演された。すべての血液細胞に分化しうる造血幹細胞は骨髄内のニッシェと呼ばれる微小環境内で維持・制御されており、CXCL12はその機能維持に必須のケモカインの1つである。このケモカインの主たる産生細胞であるCXCL12高発現細網細胞(CAR細胞)は、脂肪細胞と骨芽細胞の前駆細胞であり,造血幹細胞の増殖と未分化性の維持に必要であることがマウスをつかった研究からすでに明らかになっているが、ヒトではその情報はなかった。氏は、最新の検出技術を用いてヒト骨髄においてCXCL12高発現「ヒトCAR細胞」を単一細胞レベルで同定し、その性状や機能の解析をおこなっている。また、慢性骨髄性白血病(CML)ではCAR細胞の遺伝子発現パターンが変化しており、その機能の変容が疾患と関連している可能性が示された。

京都大学iPS細胞研究所の齊藤博英博士は「RNAスイッチ技術を活用した標的細胞の選別と運命制御」と題して、マイクロRNA に基づいた細胞選別システムとRNA構造を標的とする核酸創薬の新戦略について講演された。前半では、特定の細胞に発現するマイクロRNA(miRNA)に応答する人工メッセンジャーRNA(mRNA)をスイッチとして活用し、標的細胞の検出や細胞死の誘導ができるシステムの開発例を紹介された。この技術の応用例として、iPS細胞から分化した様々な細胞集団からフローサイトメトリーなしで目的の細胞を精密に選別できることを博士は明らかにされた。また、miRNA応答性の人工mRNAライブラリーを用いて細胞中のmiRNAの活性を測定する方法を開発され、iPS細胞へのリプログラミングを促進するmiRNAの同定などの試みを紹介された。後半では、RNA結合能をもつ分子(リガンド)がどのようなRNA 構造にどの程度結合しているのかをハイスループットに探索することができる新技術であるFOREST technologyについての最新情報を示された。

それぞれの講演は、幹細胞維持機構の破綻とヒト疾患との関連や、RNAを用いた次世代の核酸医療・創薬といった非常に興味深い話題であり、参加者との意見交換は予定時間を超えて活発におこなわれた。

 

青木一成氏

 

齊藤博英博士