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2020年6月15日
新型コロナウイルス感染症の日本における疫学情報を国際学術誌に報告(論文5編)

古瀬 祐気1,2

(1京都大学 ウイルス・再生医科学研究所、2京都大学 白眉センター)

  1. Epidemiology of COVID-19 Outbreak in Japan, January-March 2020.
    Jpn J Infect Dis (2020). https://doi.org/10.7883/yoken.JJID.2020.271
  2. Does COVID-19 infection impact on the trend of seasonal influenza infection? 11 countries and regions, from 2014 to 2020.
    Int J Infect Dis (2020). https://doi.org/10.1016/j.ijid.2020.05.088
  3. Cluster-based approach to Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) response in Japan—February–April 2020.
    Jpn J Infect Dis (2020). https://www.niid.go.jp/niid/images/jjid/COVID19/No2_2020-363R1pre20200603.pdf
  4. Association Between Numbers of “Imported Cases” and “Reported Cases in a Source Country” of COVID-19: January to April 2020 in Japan.
    J Infect (2020). https://doi.org/10.1016/j.jinf.2020.06.005
  5. Clusters of Coronavirus Disease in Communities, Japan, January-April 2020.
    Emerg Infect Dis (2020). https://doi.org/10.3201/eid2609.202272

概要

新型コロナウイルスは2019年12月に中国ではじめて感染が報告され、その後世界中に拡がりました。日本でも、1月15日に感染者がはじめて確認されて以降、感染者は徐々に増え、4月には緊急事態宣言が出されるまでに感染が拡大しました。京都大学ウイルス・再生医科学研究所の古瀬祐気(特定助教)は、厚生労働省クラスター対策班の一員として疫学データの解析を主に担当しています。それに伴い、これまでに5編の論文を発表しました。以下に、それぞれの論文の概要を記します。

  1. 日本における流行の推移を示すとともに、年齢・性別による感染者数の違いや重症・死亡者数の割合を解析しました。特に、高齢の男性で重症化しやすいことを明らかにしました。
  2. 新型コロナウイルスの流行が起こった2020年初頭では、インフルエンザの罹患者数が日本を含む東アジアでは低下しているものの、その傾向が欧米では観察されなかったことを示しました。
  3. 「クラスター対策」の特徴と意義について、日本独自の戦略を説明しました。
  4. 日本では、他国からの輸入症例が、流行の初期に多くありました。相手国の流行状況と、日本において見つかるその国からの輸入症例数の関係について報告しました。単に相手国の感染者報告数を見るだけでは、輸入症例が持ち込まれるリスクの評価が難しいことを示しました。
  5. 「クラスター」と呼ばれる感染者の集団が、日本においてはどのような場で見られたか、そしてそれらのクラスターを形成する感染者にはどのような特徴があるのかを解析しました。特に、症状のほとんどみられない若年の感染者が、クラスターを形成しうることを明らかにしました。

これらの知見は、日本における新型コロナウイルス感染症の疫学的特徴を世界に向けて発信すると同時に、今後の対策を考えていくにあたって重要なエビデンスとなります。これらの論文発表は、厚生労働省クラスター対策班に参加しているさまざまな研究者(所属は京都大学・東北大学・北海道大学・長崎大学・国立国際医療研究センター・国際協力機構・国立保健医療科学院・国立感染症研究所など)との共同研究の成果になります。ただし、これらの論文は厚生労働省や専門家会議、クラスター対策班、あるいはそれぞれの研究者が所属する機関の意見や見解を直接に反映・表明するものではありません。