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2018年4月27日
Regnase-1は気道上皮細胞と獲得免疫細胞との相互作用を制御することにより肺炎に対する防御に寄与する

中塚 賀也1,2, Alexis Vandenbon1, 三野 享史1, 吉永 正憲1, 植畑 拓也1, Xiaotong Cui1, 佐藤 鮎子3, 辻村 亨3, 鈴木 穣4, 佐藤 篤靖2, 半田 知宏2, 陳 和夫2, 佐和 貞治5, 平井 豊博2, 竹内 理1

(1京都大学ウイルス・再生医科学研究所、2 京都大学大学院医学研究科、3兵庫医科大学、4東京大学大学院新領域創成科学研究科、5京都府立医科大学)

Mucosal Immunology (Advance online publication)”

DOI: 10.1038/s41385-018-0024-5
Springer Nature (PDF): https://rdcu.be/MyWp

概要

肺にはT細胞や好中球、上皮細胞など多様な細胞群から構成される免疫機構が存在しますが、細胞間の相互作用がいかに調節されているかは十分明らかになっていません。我々はこれまでに、mRNA分解酵素である Regnase-1 の分解 がT細胞やマクロファージの活性化に寄与することを報告してきました。本研究では、Regnase-1 が気道上皮細胞でも発現し、肺炎の際にそれが分解されることで、T細胞や形質細胞、好中球などの協調的な働きを促進することを新たに見出しました。Regnase-1 を気道上皮特異的に欠損するマウス(Nkx2.1-Cre+ Regnase-1 flox/– マウス)は、緑膿菌の経気道感染に対し、コントロールマウスに比して好中球数の増多やIgA分泌の亢進を来し、死亡率が軽減されることが分かりました。Regnase-1 欠損気道上皮細胞では各種内因性抗菌因子(MUC5Bなど)や、形質細胞の遊走に寄与するケモカイン(CCL28)、気道上皮におけるIgA分泌(transcytosis)の制御因子(pIgR)、好中球遊走及び Th17 の遊走をもたらすケモカイン(CXCL5、CCL20)の発現量亢進を認めました。これらの発現亢進遺伝子は、Regnase-1 欠損ヘルパーT細胞における発現亢進遺伝子とはほとんど重複を認めませんでしたが、発現亢進遺伝子の機能を解析すると、いずれの細胞でも粘膜免疫や感染防御に関連する遺伝子群の発現が亢進していることが分かりました。この結果は、上皮細胞とT細胞でのRegnase-1 が、異なった標的遺伝子発現を制御しつつ、両細胞の相互作用を促進することにより相乗的に感染防御機能の活性化をもたらす可能性を示唆します。本研究は肺炎の際にRegnase-1 の分解が血球細胞と上皮細胞の間の相互作用を制御し、感染防御に重要な役割を果たしていることを明らかにしました。