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2016年10月15日
ヒトにおけるエボラウイルス増殖の数理学的解析

Alexey Martyushev1、 中岡慎治2、佐藤佳3,7、野田岳志4,6,7*、岩見真吾5,6,7

(1 New South Wales大学、2 東京大学大学院医学研究科、3 京都大学ウイルス研究所ウイルス病態研究領域、4 京都大学ウイルス研究所ウイルス微細構造研究領域、5 九州大学理学研究院、6 PRESTO JST、7 CREST JST)(*責任著者))

“Modelling Ebola virus dynamics: Implication for therapy”

Antiviral Research 135; 62-73 (2016) DOI: http://dx.doi.org/10.1016/j.antiviral.2016.10.004

概要

エボラウイルスはヒトを含む霊長類に高い病原性を示し、時として重篤な出血熱を引き起こします。私たちは、エボラウイルス感染症を定量的に理解することを目的として、エボラウイルス増殖の数理モデルを構築しました。2000-01年のウガンダにおけるアウトブレイクで得られた45名の患者血中ウイルス量データを用いた数理解析により、致死的な感染における血中ウイルス量は非致死的な感染時と比較して優位に高く、そのウイルス増殖は、マクロファージ等の感受性細胞が大量にウイルス増殖部位にリクルートされることによって維持されることを明らかにしました。また、作用機序の異なる抗エボラウイルス薬の効果を定量的に解析し、いずれの抗ウイルス薬でもウイルス感染初期に約80%のウイルス増殖を抑制できれば発症を防げることを示しました。
本研究は、九州大学理学研究院との共同研究であり、科学技術振興機構CRESTおよび日本学術振興会基盤研究(B)特設分野(複雑系疾病論)による研究成果です。

図)エボラウイルス増殖の数理モデル