| 2026年3月26日 関節マクロファージの病原性惹起機構を解明 |
向山 宙希1,2、竹内 悠介1,2、小原 乃也1,3、李 尹河1、渡邊 仁美1、加藤 博己4、近藤 玄1、森信 暁雄2、廣田 圭司1,4*
(1 京都大学医生物学研究所統合生体プロセス分野、2 京都大学大学院内科学講座臨床免疫学、3 京都大学白眉センター、4 Institute of Cardiovascular Immunology, Medical Faculty, University Hospital Bonn)
Pathogenic GM-CSF drives functional diversification of inflammatory macrophages in autoimmune arthritis
Science Advances (2026) doi.org/10.1126/sciadv.aec0986
京都大学ホームページ
関節マクロファージの炎症惹起機構を解明―関節リウマチの新たな治療法開発に期待―
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2026-03-26
概要
関節リウマチは人口の1%が罹患する自己免疫疾患であり、免疫細胞が炎症を誘導し関節の痛みや腫れを引き起こします。マクロファージは腫瘍壊死因子(TNF)などの炎症性サイトカインの主要な供給源であり、病態に中心的な役割を果たしており、また、近年では痛みにも関わることがわかってきました。顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)は、関節炎の病態形成に深く関与していることがマウスモデルや臨床試験から示されていました。しかし、マクロファージによる炎症と痛みがどのように制御されているか、またGM-CSFがどの細胞にどのような影響を与えて炎症を引き起こしているかはわかっていませんでした。研究チームはGM-CSFが関節のマクロファージにどのような影響を与えるのかを解明するために研究を行いました。
本研究では、ヒトの関節リウマチに類似した自己免疫性関節炎モデルマウスのSKGマウスを使用しました。まず、ケモカイン受容体であるCCR2を欠損したSKGマウスは炎症性単球が関節に遊走できず、野生型SKGマウスより関節炎が有意に軽症になったことから、炎症性単球が関節炎に重要であることを示しました。関節マクロファージの発生と分化過程を解析したところ、組織常在性マクロファージではなく骨髄から移動してきた単球が、病原性マクロファージの主要な前駆細胞であることが明らかになりました。次に、CCR2欠損SKGマウスとGM-CSF受容体欠損SKGマウスの混合骨髄キメラを作成し炎症性単球およびマクロファージにおけるGM-CSFシグナルを遮断すると関節炎に抵抗性を示したことから、炎症性単球とマクロファージの病原性獲得にはGM-CSFシグナルが必須であることを突き止めました。
さらに、野生型SKGマウスとGM-CSF受容体欠損SKGマウスの骨髄の混合骨髄キメラを用いて、炎症関節滑膜のミエロイド系細胞のシングルセルRNAシーケンスを行いました。その結果、GM-CSF受容体欠損SKGマウス由来の細胞では、Arg1+マクロファージとEpCAM+マクロファージが欠損していました。これらのマクロファージは炎症性サイトカインを高発現しており、またEpCAM+マクロファージはCCL17という痛みに関わる分子を特異的に発現していました。GM-CSFはこれらの特定の機能を持った病原性の高いマクロファージ集団の分化に必須であるということが初めて明らかになりました。この研究成果は関節炎の病態形成および痛みと炎症がどのように結びついているかという仕組みの解明において重要な意義を持ちます。

図) 骨髄から血液中を移動してきた炎症性単球は関節に入るとGM-CSFの作用を受けてArg1+およびEpCAM+マクロファージに分化し関節の炎症増幅に関わる。特にEpCAM+マクロファージはCCL17を介して痛みにも関わっている。
