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2025年4月24日
細菌が環境中の鉄の存在を「知る」しくみを解明 膜タンパク質の多段階切断を介して、細胞外の情報が細胞内へ伝達される

秋山芳展 医生物学研究所教授、横山達彦 岐阜大学助教、久堀智子 同准教授、永井宏樹 同教授らの研究グループは、奈良先端科学技術大学院大学と理化学研究所との共同研究で、細菌が環境の鉄イオンを感知する分子メカニズムを解明しました。

概要

生命は、生存に不可欠な元素である鉄を取り込むために、巧妙なシステムを進化させてきました。効率的に鉄を取り込むために、細菌は外界の鉄を感知することができますが、その分子メカニズムの全容はこれまで不明でした。細菌は鉄を取り込む際に、分子モーターが生み出す機械的な力を利用することが知られています。本研究ではこの力が、情報伝達を担う膜タンパク質「FecR」にも伝わり、FecRの連続的な切断を引き起こすことを突き止めました。そして、こうして生じたFecR断片が、鉄の取り込みに必要な遺伝子群の発現を誘導することを明らかにしました。本成果は、タンパク質切断を介した情報伝達の新たなメカニズムを提示し、生体機能制御の基盤となる仕組みの一端を明らかにしたものです。

本研究成果は、2025年4月17日に、国際学術誌「PNAS(米国科学アカデミー紀要)」にオンライン掲載されました。

詳細は京都大学のホームページをご覧ください。

細菌が環境中の鉄の存在を「知る」しくみを解明 膜タンパク質の多段階切断を介して、細胞外の情報が細胞内へ伝達される

 

【DOI】
https://doi.org/10.1073/pnas.2500366122
【書誌情報】
Tatsuhiko Yokoyama, Ryoji Miyazaki, Takehiro Suzuki, Naoshi Dohmae, Hiroki Nagai, Tomoya Tsukazaki, Tomoko Kubori, Yoshinori Akiyama (2025). Cleavage cascade of the sigma regulator FecR orchestrates TonB-dependent signal transduction. Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS), 122 , 16, e2500366122.