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2026年5月21日
体の温度適応の多様性を決める新たな仕組みを解明−線虫の温度応答神経回路の多様性を決める small RNA の発見−

岡畑 美咲1,2、井木 太一郎3、吉名 佐和子4、水口 洋平5、森 雪永2、澤田 夏美2、三浦 徹2、甲斐 歳惠3、豊田 敦5、三谷 昌平4、太田 茜2、久原 篤2

(1京都大学医生物学研究所、2甲南大学大学院自然科学研究科、3京都大学大学院生命科学研究科、4東京女子医科大学医学部、5国立遺伝学研究所)

Natural variations in small RNA origin loci generate circuit diversity underlying temperature acclimation in Caenorhabditis elegans

PNAS (2026) https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2538076123

 

概要

甲南大学理工学部の久原篤 教授、岡畑美咲 客員研究員(研究当時)(京都大学医生物学研究所 助教)、太田茜 特任研究准教授(研究当時)(JSTさきがけ研究者、甲南大学研究員)、井木太一郎 特定准教授(京都大学大学院生命科学研究科)らの研究チームは、「進化の過程で蓄積された小分子RNA(sRNA)の自然変異が温度適応の多様性を決める神経回路を生み出す」ことを線虫の解析から明らかにしました。

研究チームはシンプルな実験動物である線虫C. エレガンスの温度順化を解析してきました。世界各地で単離された線虫多型株が示す温度順化の違いを決定する原因遺伝子として、smrn-1遺伝子を同定しました。従来、smrn-1は線虫種だけが持つ機能未知のタンパク質の遺伝子と考えられていましたが、研究チームによる解析から、smrn-1の遺伝子配列はヒトにも存在することが明らかになりました。smrn-1は初期胚でsmall RNAを最も多く蓄積し、酸素受容ニューロンの軸索発生を制御していました。この酸素受容ニューロンからの酸素情報が下流のADL温度受容ニューロンの温度応答性に影響を与えることで温度馴化多様性が生み出されることがわかりました。

これまでにsRNAの研究は盛んに行われてきましたが、sRNAをコードする遺伝子がどのように体に影響するかを明らかにした研究は2024年にノーベル生理学・医学賞を受賞したアンブロス博士とラブカン博士の研究以来、ほとんど報告されていません。本研究から、進化の過程で蓄積された自然変異によってsRNAが多様化し、線虫の発生初期にsRNAがニューロンの形に影響を与えることによって、生息地の温度環境に適応した複雑な神経回路を形成することがわかりました。今回見つかったsmrn-1の遺伝子配列は線虫には6箇所ですが、ヒトゲノムには約1700箇所存在するため、ヒトの環境適応における脳・神経系の多様性の理解にもつながる可能性が期待されます。

 

詳細は京都大学のホームページをご覧ください。

体の温度適応の多様性を決める新たな仕組みを解明―線虫の温度応答神経回路の多様性を決めるsmall RNAの発見―
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2026-05-19