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2023年12月5日
【セミナー】母体胆汁酸代謝による胎児発生制御機構 Roles for maternal bile acid metabolism in fetal development
日時: 2023 年12 月5 日(火) 11:00~12:30
場所: 京都大学医生研 2 号館 1 階セミナー室 (104)
演者: 三原田 賢一 特別招聘教授
熊本大学 国際先端医学研究機構 幹細胞プロテオスタシス学研究室
Group leader, Laboratory of Stem Cell Metabolism, Lund Stem Cell Center, Lund University
演題: 母体胆汁酸代謝による胎児発生制御機構
Roles for maternal bile acid metabolism in fetal development

講演要旨

近年、不妊症に加えて不育症に注目が集まっているが、その原因の多くは不明である。妊娠中、
母胎は必須栄養素の供給に加えて毒性物質の分解を行うことで胎児発生を支えていることは広く
理解されている。一方で、母子連関に関わる分子機構は謎の部分が多い。胆汁酸は胆汁の主成分で
あり、肝臓内でコレステロールから合成されるステロイド代謝物である。主な役割は脂質分解・吸
収であるが、最近では化学シャペロンやシグナル伝達分子としての側面が明らかにされている。胆
汁酸合成にはClassic pathway とAlternative pathway という二つの主要合成経路が存在し、
Cytochrome P450(CYP)酵素群が多く関与している。これら2 つの合成経路のうち、Alternative
pathway は妊娠期に活性化されていることが以前より知られていたが、その生理学的な意義は知ら
れていない。そこで我々は、Alternative pathway の出発酵素となる27-hydroxylase(Cyp27a1)
欠損マウスを解析し、胆汁酸合成経路の妊娠期における役割を解明することを目指している。
Cyp27a1 欠損胎仔は、ヘテロ欠損母親マウスの胎内で成育する場合は正常に発生する。一方で母親
マウスがホモ欠損の場合、妊孕率の低下や異常発生が観察され、肝内で増幅するはずの造血幹細胞
が小胞体ストレスの上昇により減少した(Sigurdsson et al., Cell Stem Cell, 2016)。さらに最
近の研究により、ホモ欠損母親マウスから出生したマウスは全例が呼吸窮迫症候群で死亡すること
もわかった。検証の結果、胆汁酸合成の中間代謝物であるオキシステロールが蓄積することが原因
であることがわかった。本講演では、その詳細な分子メカニズムを紹介し、母胎における胆汁酸代
謝の重要性、胎児発生異常の新たなメカニズムを提唱する。(開催言語:日本語 Language:Japanese)

世話人:京都大学医生物学研究所 組織恒常性システム分野
豊島 文子 (ftoyoshi*infront.kyoto-u.ac.jp)(*を@に変えてください。)