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京都大学医生物学研究所 所長 朝長 啓造 京都大学医生物学研究所
所長 朝長 啓造

京都大学医生物学研究所の所長を拝命いたしました朝長啓造です。
本研究所は、長い歴史を持つウイルス研究所と再生医科学研究所が統合し、「医生物学分野における多様な領域の融合的研究の自由な推進と交流により、新たな知の発見と創造を目指す」ことを理念に進めてまいりました。所長という重責を担うにあたり、これまでにノーベル賞受賞者をはじめ、わが国の、そして世界の研究をリードしてきた数多の先達が積み重ねてきた両研究所の歴史の重みを再認識するとともに、新しい時代に向けて、本研究所の使命を果たすべく、身の引き締まる思いです。2026年、医生物学研究所は大きな節目を迎えます。2016年に両研究所が統合してから、ちょうど10周年を迎えます。この10年間、私たちは一つのアイデンティティの下、領域の垣根を超えた融合研究を推進することで、数多くの卓越した研究成果を生み出してきました。10年の歩みは、単なる組織の統合に留まらず、新しい学問領域の確立へのひとつの挑戦であったと言えます。これまでの歩みを単なる経過として捉えるのではなく、次なる10年に向けた真の発展のためのスタートラインとしたいと考えます。

現在、京都大学は国際卓越研究大学に向けた大きな変革の時期にあります。そのような中で、本研究所に求められるのは、既存の学問領域を深化させること以上に、未来の学問領域を構想し、切り拓いていくことと考えます。これまでにも、オルガノイドを用いた感染症や再生医学の展開、構造解析と生命科学の融合、そして数理や工学的手法を取り入れた生命医工学など、領域横断的なアプローチから新しい学問の発展を牽引してきました。

一方で、科学の進展は極めて速く、研究に求められる環境も刻々と変化しています。私たちは、常に動的に進化し続ける組織でありたいと考えています。そのためには、既存のシステムにとらわれることなく、これからの時代を担う優秀な若手研究者が、自らの発想を信じ、リスクを恐れずに未知の領域へ踏み出せることを第一に、研究環境の整備に注力したいと考えています。

本研究所の先端的な研究は、附属研究施設と共通機器に支えられています。感染症モデル研究センター、ヒトES細胞研究センター、再生実験動物施設に加え、クライオ透過型電子顕微鏡をはじめとする高度な共通機器を整備しています。これらの研究資源は共同利用・共同研究拠点「ウイルス・幹細胞システム・医生物学共同研究拠点」においても、国内外の研究者に広く開放し、本研究所が国際的な研究ネットワークの中心となる基盤を形づくってきました。今後も、挑戦的な共同研究を積極的に支援し、新たな学術的価値を創出する拠点として発展してまいります。

最後に、老子の諸章の中から、4つの句を集句として掲げたいと思います。

不自見、故明
自知者明
知常曰明
知足者富

解釈を特には添えませんが、これらの句に通底する「明」と「知」に関する教えは、真理を追究する科学者の姿勢そのものであり、また私が本研究所を運営していく上での指針でもあります。今後も、医生物学研究所が、新たな知の創造により人類の健康と幸福に寄与する明を照らし続ける場所であり続けるよう、全力を尽くしてまいります。

皆様の温かいご支援を心よりお願い申し上げます。

2026年4月
京都大学 医生物学研究所長 朝長 啓造