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2015年度 共同研究課題達成状況

【1】霊長類P3実験として計 10件の研究をおこなった(結核菌脂質免疫の研究1件、インフルエンザウイルスの研究1件、免疫不全ウイルス(SIV及びサル指向性HIV)に関する研究 6件、サルT細胞白血病ウイルスの研究1件、サルレトロウイルス5型(SRV5)の研究 1件)。

1.北海道大学薬学研究院・中村孝司助教とリポソームを利用した抗結核脂質ワクチンの開発についての研究を行った。これまでの研究から、アカゲザルにおいてBCG接種により顕著なGMM特異的T細胞応答を誘起できることを明らかにしてきたが、GMMリポソーム接種によるGMM特異的T細胞応答の誘導は限定的であり、これを鋭敏に検出する方策の確立が急務と考えられた。そこで脂質特異的CD1拘束性T細胞群を規定するマーカー分子の同定を試みた。数回のミエローマ細胞融合の結果得られた多数の抗アカゲザルリンパ球抗体プールから、GMM特異的T細胞を含む脂質特異的T細胞を特異的かつ高輝度に染色する抗体クローンTE-1を樹立することに成功した(未発表)。

2.国立感染症研究所エイズ研究センター・俣野哲朗センター長と粘膜感染サルエイズモデルにおけるCTL誘導に関する研究を行った。SIV感染サルにおける感染免疫学的解析データを蓄積するとともに、粘膜免疫解析系として、安楽殺解剖時に採取した腸管由来のリンパ球におけるウイルス特異的T細胞反応解析系を構築した。また、SIV伝播によるウイルスゲノム等の変化を解析し、伝播によってMHC-I関連変異が蓄積することを見出した。一方、SIV感染サルモデルにおけるiPS細胞由来CD8陽性T細胞の導入実験の第一段階として、サル末梢血より分離したCD8陽性T細胞から樹立したiPS細胞をもとに、非特異的CD8陽性T細胞を樹立した。(PLoS Pathog. 2015他)

3.京都大学霊長類研究所・明里宏文教授と霊長類モデルによるHIV感染症根治に関する研究を行った。カニクイザルへのHIV実験感染後、長期に渡り血中ウイルスRNAが検出されないにも関わらず、中和活性を有する抗体価の上昇、リンパ節におけるプロウイルスDNA陽性細胞の存在、さらに抗CD8抗体投与によるHIV再活性化が示された。以上より、HIV感染カニクイザルはリザーバー細胞が存在する潜伏感染状態にあることが明らかとなった。HIV感染カニクイザルは、HIV潜伏感染モデルとしてリザーバー細胞の生体内分布や局在の解析、HIV感染症の根治に向けた新規治療法の開発推進に大きく寄与するものと期待される。(Sci. Rep. 2015他)

4.熊本大学エイズ学研究センター・桑田岳夫助教とサルエイズモデルにおける中和抗体の誘導過程の解明に関する研究を行った。BNAbの誘導メカニズムをあきらかにするため、6頭のアカゲザルにSIVsmH635FC株を接種し、中和抗体の分離と遺伝子解析を行った。感染後12週のリンパ節からライブラリを作成し、サルMM617より1種類、MM618から4種類の、以前に分離された系統とは異なる、新規の中和抗体を分離した。(未発表) 5.東京大学医科学研究所・河岡義裕教授とインフルエンザの霊長類感染モデルにおける研究を行った。高病原性H5N1鳥インフルエンザウイルスを、エアロゾル投与および従来法である経鼻・経気管投与にてカニクイザルに接種し、病原性発現の比較検討を行った。観察期間中、両投与群ともに、咳・くしゃみなどの臨床症状は認められなかった。また解剖時における臓器の肉眼所見においても、両投与群の間に顕著な差は認められなかった。今後、各種臓器のウイルス力価、病理解析などを行う。(未発表)

6.北海道大学遺伝子病制御研究所・志田壽利客員教授とBCG/ m8Δワクシニア複合抗エイズワクチン効果の確定に関する研究を行った。SIV遺伝子発現BCGプライム/ワクシニアm8Δ株ブースト法による免疫サル9頭(今年の本共同研究で3頭、過去のウイルス研究所での共同研究で2頭、米国との共同研究で4頭)と対照サル10頭(過去のウイルス研究所での共同研究で6頭、米国との共同研究で4頭)に、SIVmac251を攻撃接種した。対照は全頭感染したが、免疫サルは1頭で感染防御、1頭で感染の遅延を認めた。また、免疫群と対照群のピーク時のウイルス量はそれぞれ1.0E+7と7.9E+7コピー/mlであり、set pointでは4.2E+5と1.0E+7コピー/mlであった。(未発表)

7.徳島大学大学院医歯薬学研究部・足立昭夫教授とアカゲザルを用いたHIV-1の個体内複製機構・病原性発現機構に関する研究を行った。構築した6種類のCCR5指向性HIV-1rmtのアカゲザル末梢血単核細胞(PBMC)における増殖能を比較解析したところ、個体差はあるものの、MN4/LSDQgtuと同程度あるいはそれ以上に効率良く複製するCCR5指向性HIV-1rmtクローンが見出された(gtu+A4Y1)。また、腸管由来細胞でのウイルス増殖能評価システムの構築に向け、アカゲザル腸管生検材料からの細胞採取法を確立した。(J. Med. Invest. 2015)

8.熊本大学エイズ学研究センター・松下修三教授と中和抗体を用いたHIV感染症の「機能的治癒」をめざす新規治療法の開発(霊長類モデルにおけるPOC試験)に関する研究を行った。霊長類モデルで用いられるCCR5指向性のSHIVは、中和抗体に感受性であり、中和抗体に抵抗性HIV臨床分離株とは、性質が異なる。我々は、SHIV-KS661をサル個体で馴化し、クローン化したSHIV-MK38を用いて検討し、HIVの臨床分離株に見られるtier 2また3に匹敵する中和抵抗株であることが判明した。さらに、直腸内接種で持続感染が得られ、今後のSHIV感染霊長類モデルとして役立つと考えられる。(J. Gen. Virol. 2016他)

9.京都大学霊長類研究所・明里宏文教授とサルT細胞白血病ウイルス1型感染ニホンザルを使った動物モデルの確立と解析に関する研究を行った。STLV-1およびHTLV-1が末梢の成熟T細胞を標的とする機序をPNASに報告した。この所見はHTLV-1が末梢血Tリンパ球を標的とし、最終的に発がんに導く分子基盤を示すものである。また、アカゲザル、ニホンザルにTaxおよびHBZを発現するワクシニアウイルスを接種し、Tax、HBZ特異的免疫応答を誘導することができた。本結果はHTLV-1感染者に対する新規免疫療法開発に繋がると考えられる。(Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 2015)

10.京都大学霊長類研究所・岡本宗裕教授とニホンザルにおけるサルレトロウイルス5型(SRV5)の病原性に関する研究を行った。鹿児島県のサル繁殖施設でニホンザルが血小板減少症を呈して死亡する事例があった。この血小板減少症のサルからウイルス分離を行ったところSRV-5が分離できた。このSRV-5分離株(野生株)ならびに感染性遺伝子クローン由来のウイルスをそれぞれ2頭(雌雄各1頭)のニホンザルに接種した。それぞれの群の2頭中1頭が血小板減少症を発症し、生き残った2頭のうち1頭(感染性遺伝子クローン接種)の血小板減少率は軽度であった。(未発表)

【2】マウスP3感染実験として計2件の研究をおこなった(ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の研究1件、 高性能ワクチンアジュバントの開発1件)。

1.京都大学医学研究科・高折晃史教授とヒト化マウスを用いたHIV-1潜伏感染モデルの確立に関する研究を行った。SIV-Vpxの導入によりSAMHD1のノックダウンを行いDuoFLuo HIVを感染させた。静止期T細胞の感染効率は増加したが潜伏感染細胞の相対的割合には変化がなかった。Vpxを導入しなくとも3-4%のウイルス産生感染、1-3%ほどの潜伏感染分画が得られた。この際、当初の実験計画にあったDuoFLuo HIV(RGH:R7/GFP-EF1α-mCherry)は二種の蛍光タンパク間で相同組換えが起こることが分かったため、蛍光蛋白の組み合わせを検討し、mKO蛋白を用いた新たなDuoFluo HIV (OGH: Orange/Green/HIV)を作製しその挙動を検討中である。(未発表)

2.広島大学大学院医歯薬保健学研究院・入江崇准教授とDIゲノム産生性パラミクソウイルスを用いた高性能ワクチンアジュバントの開発に関する研究を行った。本共同研究では、上記研究のための予備検討及び動物実験技術の習得を第一目的として、過酸化水素で不活化したDI産生性SeVと、アジュバント効果が報告されているpoly(I:C)を経鼻接種した際の肺内I型IFN誘導性の比較、不活化インフルエンザをワクチンとして経鼻接種した際のアジュバント効果を検討し、不活化SeVがpoly(I:C)と同程度のIFN誘導性及びアジュバント作用を持つことが確認できた。(未発表)

【3】ウイルス・生命科学研究を計17件行った(ウイルスに関しては、HTLV-1の研究2件、HIVの研究1件、ボルナウイルスの研究1件、エボラウイルスの研究1件、デングウイルスの研究1件及び肝炎ウイルスの研究1件。ウイルス研究の基盤となる生命科学に関しては、自然免疫の研究3件、RNAスプライシングに関する研究1件、遺伝子発現調節機構に関する研究2件、細菌膜プロテアーゼに関する研究2件及び獲得免疫機構・免疫モデルシステムに関する研究2件)。

1.横浜市立大学学術院国際総合科学群自然科学系列・禾晃和准教授と大腸菌を用いた細菌型S2Pホモログの大量発現と生理的機能の検証に関する研究を行った。RsePとそのホモログについて、結晶化に向けた発現精製条件のさらなる検討に取り組んだ。また、受け入れ先研究室との共同研究の結果、RsePが膜内にβ-ヘアピンループを有することを予測し、β-ヘアピンループが基質との選択的な結合に関わる可能性があることを実験的に示すことに成功した。この研究成果は、受け入れ先研究室との共同執筆でオンラインジャーナルであるeLife誌上で論文発表された。(eLife 2015)

2.盛岡大学栄養科学部・成田新一郎准教授と大腸菌プロテアーゼ BepA による外膜タンパク質の生合成機構に関する研究を行った。BepA-TPRドメインをターゲットとして、網羅的な部位特異的 in vivo 光架橋実験を行い、多くの部位で架橋産物を検出した。これらの架橋産物を精製し質量分析及びイムノブロッティングにより解析したところ、LptD や BAM 複合体の構成タンパク質か?同定され、これらがTPRドメインを介してBepAと相互作用することが強く示唆された。(J. Bacteriol. 2015他)

3.川崎医科大学医学部・齊藤峰輝教授と遺伝子改変マウスを用いたHAM発症機構の解明と新規治療法の開発に関する研究を行った。ダブルTgマウス(Tax-2D2-TgまたはHBZ-2D2-Tg マウス)の一部が、7~8週齢でHAM類似の下肢対麻痺を自然発症した。病理組織学的解析では、上部胸髄から仙髄にかけて、くも膜下腔から脊髄実質にわたる異型リンパ球のほぼ左右対称性の浸潤を認めた。発症マウスでは、未発症マウスと比較して血漿中CXCL10濃度の有意な上昇を認めた。このマウスは、HAMの新規病態モデルマウス候補と考えられる。(J. Neurovirol. 2015他)

4.鹿児島大学共同獣医学部・堀江真行特任助教とボルナウイルスの宿主域決定因子の解明に関する研究を行った。培養細胞において各種ボルナウイルスの宿主指向性を検討したところ、オウムボルナウイルス4(PaBV-4)は鳥由来細胞には感染できるが哺乳動物由来細胞には感染できなかったため、PaBV-4の宿主指向性を規定するウイルス遺伝子の探索を行った。種々の解析により、宿主細胞への結合・侵入に関与するMおよびG遺伝子ではなく、ウイルスの核酸タンパク質複合体(vRNP)の構成因子がPaBV-4の宿主指向性を規定していることが示唆された。(J. Vet. Med. Sci. 2016他)

5.理化学研究所統合生命医科学研究センター・黒崎知博教授とRNA分解酵素Regnase-1のB細胞機能における役割の解析に関する研究を行った。Regnase-1のB細胞におけるin vivoにおける役割を解明するために、Regnase-1のB細胞特異的コンディショナルノックアウトマウスを作製した。そして、B細胞特異的Regnase-1欠損マウスにおいて、B細胞活性化の障害を認め、B細胞におけるRegnase-1によるRNA制御制御の重要性が分かった。(未発表)

6.徳島大学疾患酵素学研究センター・立花誠教授とH3K9メチル化酵素ESETの標的配列の探索に関する研究を行った。Anh-CreドライバーによってEsetをセルトリ細胞で特異的に欠損させた。Eset欠損のセルトリ細胞から得られたRNAを用い、次世代シーケンスを行った。得られたリードについてマッピングを行い、Eset欠損で誘導されるERVの発現について解析した。in silico解析の結果、ERVのうちでERV1(クラス1)、ERVK(クラス2)で脱抑制が起きていることが分かった。(Genesis 2015 他)

7.千葉大学大学院医学研究院・中山俊憲教授と慢性炎症環境下での非リンパ組織におけるPathogenic記憶ヘルパーT細胞維持機構の解明に関する研究を行った。記憶ヘルパーT細胞の大部分がiBALT内でIL-7産生細胞と接着し、IL-7がiBALT内での記憶ヘルパーT細胞の維持に必須であることを示した。また、IL-7産生細胞がIL-33、CCL21、CCL19などを作るThy-1陽性のリンパ管内皮細胞であることを証明した。さらに、ヒトの好酸球性慢性副鼻腔炎の炎症組織でも同様のIL-7産生細胞を同定した。(Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 2016)

8.東海大学医学部・中川草助教とエボラウイルスの病原性の進化メカニズムの解明に関する研究を行った。公開されている全てのフィロウイルスのゲノム配列、もしくは遺伝子配列を収集し、遺伝子ごとに多重整列を行い、系統関係を明らかにした。その系統関係に基づき、進化的にアミノ酸が変化しやすいサイト(正の淘汰)、もしくは変化しないサイト(負の淘汰)を明らかにする。そのようなアミノ酸座位がそれぞれどの機能モチーフに存在し、またどのような立体構造であるのかを構造生物学的手法により検討し、それらの情報から宿主因子との相互作用を予測する。加えて祖先配列を推定し、経時的な塩基やアミノ酸配列の変化を調べている。(未発表)

9.AIDS institute, UCLA School of Nursing, Associate professor Dr. Dong Sung AnとCRIPSR/CAS9 Vectorのデザインに関する研究を行った。We have identified 2 functional guide RNA (gRNA) agasint human HPRT gene and 1 functional gRNA against human CCR5 genes. These gRNAs were co-expressed with Cas9 and GFP from a lentiviral vector. HPRT gRNA transduced human K562 cells were positively selected in vitro with 6TG chemoselection. CCR5 gRNA transduced human CCR5 MT-4 cells showed efficient CCR5 knock out. However, the vector titer was significantly affected by the co-experssion of 3 transgenes. It was too low to transduce primaryT cells and CD34+ cells. We have reconstructed a lentiviral vector to express gRNA and Cas9 separately. The vector titer has improved for efficient primary cell transduction. We are currently optimizing a transient Cas9 delivery system. (未発表)

10.奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科・河合太郎教授とELMOタンパク質群の抗ウイルス自然免疫応答における役割に関する研究を行った。ゲノム編集によりELMOD2欠損マクロファージ細胞株と欠損マウスを樹立し解析を行ったところ、ウイルスRNAに対するI型インターフェロンや炎症性サイトカインの産生が減少していることを見いだし、ELMOD2が抗自然免疫応答制御に関与することが示唆された。さらに詳しく解析したところ、ELMOD2はウイルス認識に関わる自然免疫受容体の中でもToll-like receptor 3を介する自然免疫応答が減少している知見を得た。(未発表)

11.京都大学医学研究科・伊吹謙太郎准教授とサルの免疫細胞を持つマウスの作製に関する研究を行った。5-10歳令のアカゲザルの骨髄液を採取し、比重分離法により骨髄単核球を分離した。骨髄液約4mL/頭から分離した骨髄単核球内にCD34陽性造血幹細胞(CD34+HSC)が0.5-2.0×10^5個含まれていることがわかった。この骨髄単核球をNOGマウスに脛骨骨髄内に移植したところ、全頭で移植後7週目までにマウス末梢血中にサルCD45陽性細胞が検出され、サル細胞が生着していることが確認された。(未発表)

12.藤田保健衛生大学総合医科学研究所・前田明教授とmRNA前駆体から機能ある環状RNAか?できあがる仕組みに関する研究を行った。ciRS-7の生合成経路を解明するため、アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いてciRS-7環状化に関与すると思われるスプライス部位を阻害する実験を遂行した。その結果、投縄状RNAの再スプライシングによってciRS-7が環状化する経路を否定した。ciRS-7エクソン両端のイントロンで、反復配列SINEの一種であるMIR配列を介した相補的対合が起こり、逆向きスプライシングを引き起こしている実験的根拠が得られた。(Biochim. Biophys. Acta 2016他)

13.鹿児島大学大学院医歯学総合研究科・池田正徳教授とウイルスによる肝発癌機構の解明を目指した不死化肝細胞株の研究を行った。申請者らが利用した不死化ヒト肝細胞株を用いてHCVとHBVの感染実験をおこなったが、有意な感染は認められなかった。一方、共同研究者が樹立した不死化ヒト肝細胞株にHBV受容体NTCPを恒常的に発現させた細胞株を樹立したところ、HBVの感染を許容する細胞クローンを得た。この細胞は立体培養することでHCVに対する感染も許容した。今後、HBV DNAを導入したり、HCVゲノムを導入して肝発癌に関わる病態解明を行う準備ができた。(未発表)

14.東京農工大学大学院工学研究院・長澤和夫教授とグアニン四重鎖によるnon-coding RNA H19の転写制御機構の解明に関する研究を行った。H19遺伝子の転写開始点直下に存在するグアニンリッチ配列を含むオリゴヌクレオチドは、in vitroでG4を形成することが分かった。また、このG4配列は、H19の発現を抑制する作用があることを明らかにした。さらに、G4リガンドをマウスES細胞に添加すると、ES細胞の分化に伴うH19の発現が顕著に抑制された。以上のことから、H19遺伝子の転写開始点直下にはG4が存在し、遺伝子発現を制御することが分かった。(未発表)

15.久留米大学医学部・大島孝一教授と成人T細胞白血病リンパ腫のクロナリティ、ウイルス遺伝子発現と病理学的特徴の解析に関する研究を行った。ATL検体のクロナリティを解析して、リンパ節病変において、クローン数の増加を検出した。更に症例を増やして解析を予定している。また、HBZトランスジェニックマウスとインターフェロンガンマノックアウトマウスを交配して、リンパ腫の発症頻度を解析し、インターフェロンガンマがないとリンパ腫発症が有意に抑制されることを見出した。(PLoS Pathog. 2015)

16.大阪医科大学医学部・鈴木陽一講師とインターフェロン誘導性抗デングウイルス因子の機能解析に関する研究を行った。RyDEN (C19orf66) の発現はヒト細胞においてデングウイルス (DENV) の感染に対して抑制的に働くことがわかった。また RyDEN はインターフェロン誘導性因子であり、インターフェロンによる抗デングウイルス状態の確立において重要な役割を果たしていることが示された。さらに RyDEN は他の細胞性因子と複合体を形成することによって、DENV のタンパク合成段階を阻害することが示唆された。(PLoS Pathog. 2016)

17.近畿大学大学院薬学研究科・藤原俊伸教授と自然免疫応答における転写後調節の解明に関する研究を行った。これまで上手く行かなかったマクロファージを用いたショ糖密度勾配遠心分離法によるtranslationally active mRNAが局在するpolysome分画の分取に成功し、新規制御因子のノックアウト(KO)のマクロファージを用いたpolysome分画のサイトカインmRNAの解析により、新規制御因子はサイトカインのタンパク質翻訳を抑制することが分かった。(Cell 2015他)