医生研について
研究について
ホーム > 共同利⽤・共同研究拠点 > ウイルス感染症・生命科学先端融合的共同研究拠点 【共同研究課題達成状況】 > 2020年度 共同研究課題達成状況
2020年度 共同研究課題達成状況

【1】霊長類P3感染実験として計4件の研究を行った。

研究代表者: 熊本大学大学院生命科学研究部 准教授 安永  純一朗
研究課題: 免疫チェックポイント阻害薬によるSTLV-1感染動態変動の解析
研究成果: STLV-1感染ニホンザル3頭に対し、抗PD-1抗体を1回量3 mg/kgを2週間間隔にて投与し、病態進行の有無および末梢血の採取、保存、解析を行った。抗PD-1抗体投与開始後、異常リンパ球の増加、リンパ節の腫大、皮疹の出現、呼吸状態の悪化などATL発症を疑う所見は得られなかった。プロウイルス量の経時的解析を行ったところ、投与前に最もウイルス量が高かった個体では、抗体投与後一過性のプロウイルス量の増加が観察された。現在、感染細胞クローナリティ、感染細胞の形質変化、免疫応答能について解析を進めている。
研究代表者: 国立感染症研究所エイズ研究センター センター長 俣野 哲朗
研究課題: サルエイズモデルにおけるCTLの腸管感染防御能に関する研究
研究成果: R01年度までの研究を発展させ、SIV Gag/Vif断片連結抗原発現センダイウイルス(SeV)ベクターワクチン接種サルのSIV特異的免疫反応解析を継続するとともに、SIV経直腸接種実験を推進し、本ワクチンのSIV特異的CTL細胞反応の選択的誘導を確認するとともに、感染防御効果を示す結果を蓄積した。Immuno-correlates解明に向け、SIV特異的T細胞反応のデータを収集・蓄積している。
研究代表者: 京都大学iPS細胞研究所 教授 金子 新
研究課題: アカゲザルiPS細胞由来遺伝子改変T細胞の生体内評価
研究成果: SHIV感染防御能を付与したCCR5 homo ノックアウトiPS細胞株(ΔCCR5 iPS細胞)由来造血前駆細胞をSHIV感染アカゲザルに骨髄内移植法による自家移植実験を行った。移植後4週の時点で、SHIVのplasm viral loadの変化は認めないが、骨髄内にiPS細胞由来の移植細胞の生着を認め、またiPS由来細胞の自家移植による明らかな有害事象を認めることなく経過している。
研究代表者: 京都大学霊長類研究所 教授 明里 宏文
研究課題: 霊長類モデルを用いたHIV根治療法の評価研究
研究成果: 前年度までの研究により、HIV持続感染カニクイザルにおいて当該ARTがHIVリザーバーサイズを顕著に低下させることを示した。そこで、HIV特異免疫により機能的根治状態となっているHIV潜伏感染ザルにARTを投与し、リンパ局所におけるリザーバーサイズへの影響について検討を行っている。また、これと平行してカニクイザルへのLRA投薬実験を行い、薬物動態およびリンパ球活性化、炎症性サイトカイン応答に関するデータを収集している。

【2】マウスP3感染実験として計2件の研究をおこなった。

研究代表者: 東京大学医科学研究所感染症国際研究センター 准教授 佐藤 佳
研究課題: ヒト化マウスモデルを用いたウイルス感染細胞のマルチオミクス解析
研究成果: ヒト血液幹細胞移植ヒト化マウスへのGFP発現HIV-1の接種実験における感染細胞のsingle-cell RNA-seq発現解析を行い、GFP陽性感染細胞は少なくとも9つの亜集団に分類されること、そして特に濾胞性CD4+T細胞群ではHIV-1とCXCL13が共発現すること、インターフェロン誘導遺伝子群の発現量が低い細胞ではHIV-1が高発現することなどを見出した。すなわち、CD4+T細胞群内でHIV-1産生細胞には明確な多様性があることがわかった。
研究代表者: 京都大学大学院医学研究科血液・腫瘍内科学 教授 高折 晃史
研究課題: 新規HIV-1治療法の確立
研究成果: 新規の潜伏感染モデルとしてウイルス潜伏と発現細胞を直接細胞レベルで解析した。ウイルスプロモータと細胞性プロモータを同時発現するHIV-1(デュアルレポータウイルス)を利用して、潜伏感染とウイルス発現細胞で特異的な遺伝子を転写開始点RNA解析法により見出した。その結果、PI3K/mTOR経路が重要な役割を有することが示唆された。

【3】ウイルス・生命科学研究として計20件の研究を行った。

研究代表者: 国立感染症研究所ウイルス第二部 主任研究官 渡士 幸一
研究課題: Bardoxolone methyl のB 型肝炎ウイルス増殖抑制分子メカニズムの解明
研究代表者: 同志社女子大学 薬学部 医療薬学科 特任助手 高橋 知里
研究課題: 新規生理活性ペプチドによる上皮バリア形成誘導機構の解明
研究成果: 本研究では、タイトジャンクションを形成誘導する因子を質量分析により同定した。小田は、マウスの組織分泌液中にタイトジャンクションの形成を誘導する因子が存在することを見いだし、精製を行った。研究代表者の高橋は、プロテオミクス解析に精通しており、これまで多くの質量分析解析を行ってきた。高橋は小田にHPLCの操作やペプチドの扱い方などの技術指導を行うとともに、質量分析解析を行った。
研究代表者: Korea Brain Research Institute Lab Head 小曽戸 陽一
研究課題: Blastocystへの細胞移植効率を向上させる新規手法の開発
研究成果: 今年度は、昨年度までに確立した実験系である EGTA添加によるBlastocystへの効率的細胞移植実験の最適化を行う計画であったが、COVID-19の流行及びそれに伴う渡航・来所制限のため、当初計画の遂行が困難となった。そのため、共同研究の方向を修正し、現在までに行われた共同研究実験のデータ整理、更に追加的な共同研究として、ヒトiPS細胞のHES1遺伝子ノックダウンを行い、神経分化が促進されることを確認することに成功した。
研究代表者: 大阪大学大学院医学系研究科 教授 石井優
研究課題: 感染モデルにおける骨髄NK細胞の動態の解明
研究成果: ウイルス・再生医科学研究所の動物実験施設にて、CX3CR1-GFPマウスとNcr1-Cre x R26R-tdTomatoマウスを交配し、Ncr1-Cre x R26R-tdTomato x CX3CR1-GFPマウスを作出した。まず、このマウスの骨髄を大阪大学医学研究科で生体内イメージング解析したところ、赤色でラベルされたNK細胞と緑色でラベルされた単球・樹状細胞が明確に検出された。今後、このマウスをウイルス再生研の2光子励起顕微鏡でも観察する計画である。
研究代表者: 長浜バイオ大学サイエンス学部 助教 阪上 起世
研究課題: AKT活性化による神経変性疾患の理解
研究成果: 現在、申請者はGt(Rosa)26Sor遺伝子座にCAGプロモーター下にloxP-, frt-flanked STOPカセットとhumanAKT1を挿入したターゲティングベクター構築を試みている。野生型hAKT1、活性型myrAKT∆PH、不活性化hAKT1(3A: 179A, 308A, 483A)のC末端側にHAタグを融合したコンストラクトを発現ベクターに挿入し、培養細胞レベルで発現の確認を行っている。今後CRISPR-Cas9によりノックインマウス作製をする。
研究代表者: UCLA AIDS institute, UCLA School of Nursing Professor An, Dong Sung
研究課題: Develop a selectable anti-HIV-1 gene therapy vector using Sendai virus based CRISPR/CAS9 delivery system
(CRISPR/CAS9発現センダイウイルスベクターに基づく選択的抗HIV遺伝子治療法の開発)
研究成果: We developed SeV vectors to transiently express CRISPR/CAS9 for co-editing CCR5 and HPRT and testing the efficiency of HPRT/CCR5 editing in human CD34+ HSPC. We examined the efficiency of SeV vector transduction in CD34+ HSPC and determined the frequency of HPRT and CCR5 editing in CD34+ HSPC. We examined positive selection of HPRT-edited CD34+ HSPC with 6TG, and (4) determined the frequency of off-target sites in CD34+ HSPC.
研究代表者: 大阪大学大学院生命機能研究科 助教 下條 博美
研究課題: 転写因子Neurog2の発現動態の多様性によって制御される細胞運命決定機構の解明
研究成果: Neurog2の異なる発現動態によって制御される下流遺伝子を明らかにするために、Neurog2が異なる発現動態を示す様々な分化段階の神経前駆細胞の回収が終了した。今後、これらの細胞を用いて、抗Neurog2抗体を用いたChIP-seqを行い、それぞれの細胞におけるNeurog2が制御する下流遺伝子を明らかにし、動態の違いによって制御される遺伝子群の違いを明らかにする。
研究代表者: 大阪大学大学院医学系研究科感染症・免疫学講座ウイルス学 准教授 本田 知之
研究課題: ジリス内在性ボルナウイルス様配列の機能解析
研究成果: ボルナウイルスの感染伝播についてモデルを構築した。細胞間伝播についてモデルから計算したitEBLNによる抑制と、細胞内核酸合成についてモデルから計算した抑制では乖離があった。そのことから、itEBLNによるボルナウイルス複製阻害は、ウイルスの核酸合成の阻害に加え、それ以外のステップでも行われている可能性が示唆された。
研究代表者: 横浜市立大学大学院生命医科学研究科 准教授 禾 晃和
研究課題: 電子顕微鏡イメージングによる細菌型S2Pのドメイン配置の推定
研究成果: S2Pホモログのペリプラズム領域に存在するPDZタンデムのループにPAタグと呼ばれる配列を挿入した変異体を作製した。特に本研究では、この挿入配列の最適化を行うことで、S2Pホモログの立体構造が出来る限り維持された状態の変異体を作製した。そして、PAタグを特異的に認識するNZ-1抗体のFab断片を結合させた複合体試料を調製し、電子顕微鏡解析を行うことでPDZタンデムの空間配置の推定を行った。
研究代表者: 京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻 准教授 伊吹  謙太郎
研究課題: サル免疫細胞を持つマウスにおけるSIV感染病態の解析
研究成果:  SIVB670株接種サル化マウスは、末梢血でのウイルス感染とそれに伴うサルCD4+T細胞の減少及びCD8+T細胞の増加を認めた。ウイルス接種後早期に発熱症状が認められたことから、剖検後、リンパ系組織におけるサイトカイン産生細胞について調べたところ、脾臓、小腸、子宮を除くすべての組織でIFN-γ及びIL-6産生細胞が検出され、そのほとんどは両サイトカインを同時に産生していた。また、脳内においては血管拡張が観察され、サイトカインによる炎症反応が起こっていることが示唆された。
研究代表者: 慶應義塾大学先端生命科学研究所 特任准教授 井上 浄
研究課題: 病原性ウイルスに対する高機能抗体の創出
研究成果: SLOT法に改良を加え最適化した「SLOT法2.0」を用いて、ラッサウイルスおよびSARS-CoV2に対する高機能抗体の作成を試みたところ、ラッサウイルスに対する抗体を産生するハイブリドーマを23クローン、SARS-CoV2については16クローンの取得に成功した。また、SARS-CoV2の16クローンのうち、10クローンについては中和活性があることを確認した。
研究代表者: 京都大学大学院生命科学研究科 特定助教 山田 真弓
研究課題: レンチウイルスを用いた、神経幹細胞の分化制御メカニズムの解明
研究成果: 新規に開発した光操作技術PA-Tet ver.2を搭載したレンチウイルスを用いて、培養神経幹細胞に光操作システムを導入した。転写因子Ascl1やOlig1/2の内在性のダイナミックな発現をタイムラプス顕微鏡により観察し、光操作技術によって人工的に再現するために、光照射条件の検討を行った。Ascl1やOlig1/2の様々な発現動態を誘導した際に、神経幹細胞の増殖や分化にどのような影響を与えるのかを観察した。
研究代表者: 藤田医科大学総合医科学研究所 教授 前田 明
研究課題: 環状RNAの細胞内局在機構の解明と核内低分子RNAの3′-プロセシング因子の同定
研究成果: ① ciRS-7は、重要な機能をもつ環状RNA(circRNA)であるが、MIRと名付けた繰り返し配列(SINE)が、その生合成経路に必須であることを示した。さらにMIR依存的に産生されるcircRNA群の存在を明らかにした。
② ISG20とnuclear exosomeが細胞内で3′-プロセシング反応を担うかを次世代シーケンス法によって検証した結果、RNA分解に関与することを明らかにした。
研究代表者: 国立感染症研究所ウイルスI部 主任研究官 髙松 由基
研究課題: エボラウイルスのヌクレオカプシド輸送機序の解明
研究成果: 本研究では前駆研究で構築した非感染性ライブセルイメージングシステムを用いて、EBOVのNCLSの形成・輸送に必須である3つのウイルスタンパク質(NP, VP35, VP24)について、それぞれの輸送機能を担うドメイン・アミノ酸モチーフを同定することを目指した。本年度はVP24タンパク質について、細胞内の小胞輸送を担うペプチドモチーフ(Lドメイン)に注目して解析を進めた。そしてVP24のYxxLモチーフが、NCLS輸送で重要な役割を担うことを解明し、国際誌に発表した。
研究代表者: 京都大学農学研究科 教授 松浦健二
研究課題: シロアリのカースト分化運命決定に関わるエピジェネティック制御機構の解明
研究代表者: RIKEN Center for Integrative Medical Sciences Genome Immunobiology RIKEN Hakubi Research Team Leader PARRISH, Nicholas Fredric
研究課題: A CRISPR-based reporter of Borna disease virus RNA-to-RNA, virus-to-host gene flow
(内在性ボルナウイルス様配列に由来するpiRNAの免疫学的影響に関する研究)
研究成果: We determined that no new previously unannotated EBLNs are present in the mouse genome, obtained knock-out mice, and generated virus stocks for ongoing infection experiments to answer the remaining two questions.
(我々は、マウスゲノムには新たな未同定のEBLNが存在しないと判断した。そこで、ノックアウトマウスを作製し、感染実験のためのBoDV株のウイルスストックの作製を断続的に行った。)
研究代表者: 長崎大学熱帯医学研究所 助教 浦田 秀造
研究課題: 蛍光プローブを利用した高病原性ウイルスに対する創薬基盤研究
研究成果: アレナウイルスのプロトタイプウイルスであるリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス (LCMV)のZを用いて、その多量体化をモニターし、かつハイスループットスクリーニングに適したFRETプローブ:Zabtonを開発した。今年度は、Zabtonを用いた化合物スクリーニングから得たヒット化合物の内1つが、有意な抗LCMV効果を発揮することがわかり、プローブ開発から化合物取得までの一連の研究成果をCell Structure and Function誌にて発表した。
研究代表者: 群馬大学大学院医学系研究科生体防御学 教授 神谷 亘
研究課題: 新興コロナウイルスに対するワクチンプラットホームの開発とその応用
研究成果: 細菌性人工染色体(BAC)を用いて新型コロナウイルスの組換え系を確立するとともに、新型コロナウイルスのRNAレプリコンを作製し、新型コロナウイルスの病原性の解析に供するとともに、抗ウイルス薬スクリーニングへの応用を行った。
研究代表者: 山形県立米沢栄養大学健康栄養学部 教授 成田 新一郎
研究課題: 大腸菌BepAの機能制御機構の解析
研究成果: BepAのHis-246 残基の役割を明らかにするために、本残基に変異を導入し、変異型BepAの機能を調べた。その結果、これらの変異体では、BepAのプロテアーゼ活性が昂進しており、通常は分解しない、正常な生合成経路にある基質外膜タンパク質(LptD)をも分解することが分かった。His-246残基は、BepAのプロテアーゼ機能のON/OFFに関わるスイッチとして働くものと考えられる。
研究代表者: 熊本大学ヒトレトロウイルス学共同研究センター 教授 松下 修三
研究課題: COVID-19に対する治療法の開発
研究成果: COVID-19患者の末梢血B細胞より抗体遺伝子を抽出し、SARS-CoV-2のSタンパク質特異的抗体遺伝子を単離した。陽性抗体の中からウイルス中和抗体を単離した。