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2021年8月25日
ボルナ病ウイルスのポリメラーゼ蛋白質と結合するBUD23-TRMT112はウイルスRNPの染色体への結合を媒介する

Garcia Bea Clarise B1、堀江真行1,2、小嶋将平3、牧野晶子1,4、朝長啓造1,4,5

1京都大学ウイルス・再生医科学研究所 RNAウイルス分野、2大阪府立大学獣医学類、3理化学研究所 ゲノム免疫生物学理研白眉研究チーム、4京都大学大学院生命科学研究科 生体動態制御学分野、5京都大学大学院医学研究科 分子ウイルス学分野)

BUD23-TRMT112 interacts with the L protein of Borna disease virus and mediates the chromosomal tethering of viral ribonucleoproteins.
Microbiology and Immunology (2021)  DOI: 10.1111/1348-0421.12934

概要

ボルナ病ウイルス(BoDV-1)の核内持続感染には、ウイルスRNPと宿主染色体との接合が必要であることが分かっている。しかしながら、染色体接合をはじめ、BoDV-1の核内動態に関与する宿主因子については多くは明らかになっていない。本研究では、BoDV-1のRNA依存性RNAポリメラーゼをコードしているLタンパク質と相互作用する宿主因子をBioID法で同定することで、BoDV-1の核内動態を制御する分子メカニズムの解明を試みた。その結果、メチル基転移酵素(MTase)の補助因子であるTRMT112が、18S rRNAのMTaseであるBUD23と相互作用して、Lタンパク質に結合していることが明らかとなった。解析の結果、BUD23-TRMT112をノックダウンした細胞ではBoDV-1の複製効率に変化は見られず、BUD23-TRMT112はウイルスの転写・複製には直接影響はしていないものと考えられた。一方、ウイルスRNPの核内動態を詳細に観察した結果、BUD23-TRMT112ノックダウン細胞では、ウイルスRNPの宿主染色体への接合効率が低下していることが明らかとなり、BUD23のメチル基転移酵素活性がウイルスRNPの宿主染色体との接合に重要であること示された。本研究により、BoDV-1の核内持続感染の維持における宿主因子の役割が明らかとなった。今後、BUD23-TRMT112がウイルスRNPの染色体接合に果たす詳細なメカニズムを解明する必要があると考えられる。

図.  BoDV-1 Lタンパク質の宿主因子とのインタラクトームを示すSTRINGネットワーク。赤は核タンパク質を示す。線の太さは、その相互作用を支持するデータの強さを示している。