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2021年6月16日
日本の再生医療新法に遵守した臨床用ヒトES細胞株KthES11の樹立に成功、臨床用ストックとしての重要特性を保持

川瀬栄八郎、高田圭、中谷良子、山崎静香、末盛博文 (京都大学ウイルス・再生医科学研究所 附属ヒトES細胞研究センター 臨床基盤分野)

Generation of clinical-grade human embryonic stem cell line KthES11 according to Japanese regulations
Stem Cell Research (2021) doi.org/10.1016/j.scr.2021.102383

概要

京都大学ウイルス・再生医科学研究所 末盛博文 准教授、川瀬栄八郎 同特定講師、高田圭 同技術主任らの研究グループは、同所附属ヒトES細胞研究センター臨床基盤分野に設置されたCell Processing Facility(CPF)で再生医療新法に従った臨床用ヒトES細胞株(KthES11)の樹立に国内で初めて成功し、その成果が国際誌Stem Cell Research誌に掲載されました。

本研究グループではKthES11株の樹立成功に関しては既に報道発表しておりますが、さらに詳細な評価を行い、臨床応用可能な特性を有していることを今回確認致しました。KthES11はヒトES細胞としての基本的な特性を有しており、私達が行った安全性試験も全て合格致しました。

本施設ではKthES11をはじめ現在までに臨床可能なヒトES細胞株を6株有しており、基礎的研究や目的とする細胞への分化能の検討などに用いるための『評価用ストック』と臨床研究用として実際に使用可能な『臨床用ストック』の準備もできております。具体的な分配申請に関してはヒトES細胞研究センターのホームページの「ヒトES細胞の分配申請」を参考にしてください。KthES11以外の細胞株についても現在詳細な検討を行っており、また新規臨床可能ヒトES細胞株の樹立に関しても進め、順次その成果の発表を予定しています。

多能性幹細胞を用いた細胞移植医療において、iPS細胞に加え、本研究グループで樹立足された臨床用ヒトES細胞株を新たな選択肢として比較検討を進めることで、再生医療の大きな前進に寄与することが期待されます。

臨床⽤ヒトES細胞株の樹⽴とストック作製を⾏う細胞調整室での作業⾵景
(安全性を確保するため特別に洗浄された部屋でクリーンスーツを着⽤して作業する)
今回樹⽴された臨床⽤ヒトES細胞株KthES11 (論⽂ 図1Aより抜粋)
ヒトES細胞として典型的な形態を⽰している。論⽂ではこの他にもヒトES細胞としての特性試験、さらには安全性試験も⾏い、問題点がないことを確認している。
臨床⽤ヒトES細胞株KthES11はこの液体窒素タンクに凍結チューブに保存され、リクエストにより各⽅⾯に分配を⾏っている。1つの凍結チューブには100万個以上の細胞が⼊っている。