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2020年3月9日
骨再構築(リモデリング)のシミュレーション実験基盤を開発

亀尾佳貴1,2,3、宮雄貴2、林幹人4、中島友紀4、安達泰治1,2,3

(1京都大学ウイルス・再生医科学研究所、2京都大学大学院工学研究科、3京都大学大学院生命科学研究科、4東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科)

”In silico experiments of bone remodeling explore metabolic diseases and their drug treatment”
Science Advances (2020) DOI: 10.1126/sciadv.aax0938

概要

骨の構造と機能は、よく制御された骨吸収と骨形成の代謝バランスによって維持されています。この骨リモデリングの詳細な分子・細胞メカニズムについては、これまで多くの研究が行われてきました。しかし、骨代謝に関与する細胞間のシグナル伝達の経路はあまりに複雑なため、骨疾患時や薬物治療の過程において、リモデリングによる骨の形態変化を予測することは非常に困難でした。
そこで本研究では、分子・細胞の相互作用と組織・器官の形態変化とを関連付けた骨リモデリングの数理モデルを提案し、それを組み込んだ骨リモデリングのシミュレーション実験基盤「V-Bone」を開発しました。開発したV-Boneを用いて、網目状の海綿骨が力学的な荷重に応じてその構造を適応させるという古くから知られた現象に加え、骨粗しょう症や大理石骨病などの骨疾患の病態をコンピュータ内で再現することに成功しました。また、V-Boneにより、特定のシグナル分子の発現を任意に変動させて骨代謝への影響を調べるコンピュータ内(in silico)実験が可能になりました。更に、臨床応用としてV-Boneによるin silico投薬実験は、骨疾患に対するさまざまな薬物治療の効果の予測に有用であることを示しました。
V-Boneを用いたin silico実験は、従来の生体内(in vivo)実験や試験管内(in vitro)実験と並ぶ新たな研究手法として、今後の骨代謝研究の発展を推進させると考えています。また同時に、網羅的な薬剤評価や効果的な投薬方針の策定などを促す臨床支援ツールとして、将来の医療への多大な貢献が期待されます。


本研究のイメージ図 (c)2020 あいちゃん