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2022年8月25日
エボラウイルスのウイルス粒子形成における転写制御タンパク質の役割を解明

Takamatsu Y, Yoshikawa T, Kurosu T, Fukushi S, Nagata N, Shimojima M, Ebihara H, Saijo M, Noda T.
Journal of Virology, e0108322 (2022) DOI: 10.1128/jvi.01083-22.

概要

長崎大学熱帯医学研究所ウイルス学分野の髙松由基准教授(元・微細構造ウイルス学分野)、野田岳志教授らの共同研究チームは、エボラウイルスの転写制御タンパク質VP30がウイルス粒子形成にどのように関与するのか、各種高解像度顕微鏡解析を用いて解明しました。

エボラウイルスはヒトに対して高い致死率の出血熱を引き起こしますが、特異的な治療法は確立されておらず、BSL-4病原体に分類されています。エボラウイルスのウイルスタンパク質VP30は可逆的リン酸化を介して、ウイルスゲノムの転写と複製を制御することが知られており、我々は以前、VP30の可逆的リン酸化を制御することでエボラウイルスの増殖を制御できることを報告しました(Takamatsu et al. mBio. 2020.)。しかし、VP30がどのようにヌクレオカプシドに結合しウイルス粒子に取り込まれるか、その分子機構はわかっていませんでした。そこで本研究では、リン酸化の状態が異なるVP30変異体を用いて、VP30がどのようにヌクレオカプシドと結合するのか、電子顕微鏡やライブセルイメージング顕微鏡を用いて解析しました。その結果、VP30はウイルス核タンパク質NPとの結合を介してヌクレオカプシド辺縁に局在すること、リン酸化の状態によりヌクレオカプシドとの結合数が変化することが明らかになりました。このことから、エボラウイルスはVP30のリン酸化を利用し、ヌクレオカプシドに取り込むVP30の分子数を制御している可能性が示唆されました。本研究によってエボラウイルスのウイルス粒子形成機構の一端が解明されことにより、今後、VP30のリン酸化を制御する抗ウイルス薬の開発及び臨床応用への展開が期待されます。