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2020年8月28日
CRISPR Cas9遺伝子ターゲッティング技術における汎用型ドナープラスミドを開発

石橋理基1,2、阿部浩太1,2、井戸那奈美1,2、北野さつき1、宮地均1、豊島文子1,2
(1京都大学ウイルス・再生医科学研究所 生命システム研究部門 組織恒常性システム分野、2 京都大学大学院生命科学研究科 高次生命科学専攻 細胞増殖統御学分野)

“Genome editing with the donor plasmid equipped with synthetic crRNA-target sequence”

Scientific Reports 10, 14120, 2020. Doi: 10.1038/s41598-020-70804-6.

概要

細菌や古細菌の免疫機構であるCRISPR/Cas9 システムは、近年ゲノム編集技術として応用され、マウスやラット、ゼブラフィッシュなど様々なモデル生物のゲノム編集に利用されています。しかし、目的とするゲノム領域への正確な遺伝子導入個体の作製効率はあまり高くありませんでした。また、遺伝子導入のためのコンストラクトの作製や、個体樹立後の核型判定等に多くの時間と労力が必要であるため、効率よく目的の遺伝子改変個体を樹立する方法の開発が進められています。

本研究では、マウスとヒトのゲノム上でのオフターゲットを最小化した人工CRISPR/Cas9切断配列(Syn-crRNA-TS (Synthetic crRNA target sequence))をデザインし、これをマルチクローニングサイト(MCS)の両端に配した汎用性の高いドナープラスミドpCriMGET(plasmid of synthetic CRISPR coded RNA target sequence-equipped donor plasmid mediated gene targeting)を開発しました。pCriMGETのMCSに500bpの相同性アーム配列を有するレポーター遺伝子を挿入し、Syn-crRNA-TS-crRNA、On target crRNA、tracrRNA、Cas9タンパク質とともに、マウス受精卵にマイクロインジェクションした結果、Tbx3遺伝子座、およびClec4f遺伝子座へのレポーター遺伝子のin-frameノックインに成功しました。本システムでは、相同性アーム配列長を500bp程度と短く設計しましたが、近年報告された高効率遺伝子ノックイン法であるTild-CRISPR法と同程度の効率でノックイン個体の樹立が可能でした。また、トランスジェニックマウスの作出にも成功しました。

pCriMGETシステムにより、遺伝子導入コンストラクトの作製や遺伝子改変個体樹立後の核型判定にかかる時間と労力ならびにコストを大きく削減することが可能となりました。汎用性の高いドナープラスミドとして、ゲノム編集技術の発展に貢献することが期待されます。