医生研について
研究について
ホーム > 研究成果 > CRISPR-Cas9およびCRISPR-Cas12aを用いた新規高汎用型遺伝子ターゲッティングプラスミドシステムの開発
2022年11月2日
CRISPR-Cas9およびCRISPR-Cas12aを用いた新規高汎用型遺伝子ターゲッティングプラスミドシステムの開発

石橋理基1,2、牧律子1、北野さつき3、宮地均3、豊島文子1,2
1 京都大学医生物学研究所、生命システム研究部門、組織恒常性システム分野
2 京都大学大学院、生命科学研究科、高次生命科学専攻、細胞増殖統御学分野
3 京都大学医生物学研究所、マウス作成支援チーム

Development of an in vivo cleavable donor plasmid for targeted transgene integration by CRISPR-Cas9 and CRISPR-Cas12a

Scientific Reports (2022) https://doi.org/10.1038/s41598-022-22639-6

概要

 近年、CRISPR-Cas9システムを用いたゲノム編集技術の進歩によりマウスやラット、ゼブラフィッシュなどの多くのモデル生物の遺伝子改変が進められています。また、CRISPR-Cas9とは異なるProtospacer adjancent motif (PAM)配列を認識してDNAを切断するCRISPR-Cas12aも遺伝子改変に利用することで、編集可能なゲノムDNA領域が拡大されています。以前の研究で私たちは、マウスとヒトのゲノム上でのオフターゲットを最小化した人工CRISPR/Cas9切断配列(Syn-crRNA-TS (Synthetic crRNA target sequence))をデザインし、これをマルチクローニングサイト(MCS)の両端に配した汎用性の高いドナープラスミドpCriMGET(plasmid of synthetic CRISPR coded RNA target sequence-equipped donor plasmid mediated gene targeting)を開発し、CRISPR-Cas9を用いたノックインマウスの樹立に成功しました。しかし、CRISPR-Cas12aを用いたノックインマウスの樹立は殆ど報告されていませんでした。

 本研究では、pCriMGETをCRISPR-Cas12aによる切断に対応できるよう改良した新たな高汎用型ドナープラスミドpCriMGET(plasmid of synthetic CRISPR coded RNA target sequence-equipped donor plasmid mediated gene targeting via Cas9 and Cas12a)を開発しました。pCriMGET_9-12aドナープラスミドとCRISPR-Cas9の併用によりRosa26領域への5.5kbp長鎖レポーターカセット挿入、およびCRISPR-Cas12aとの併用によりHipp11領域への4kbp長鎖レポーターカセット挿入が確認されたノックインマウスの作出に成功しました。本システムでは、CRISPR-Cas9およびCRISPR-Cas12aのどちらを用いた場合でもノックイン領域の塩基欠損等は認められない正確なin-frameノックインが可能でした。

 pCriMGET_9-12aシステムは、遺伝子ターゲッティング可能なゲノム領域が拡張されたより汎用性の高いドナープラスミドとして、遺伝子改変個体の作出だけではなく、より正確なゲノム編集精度が必要となる再生医療技術の発展にも貢献することが期待されます。


図1 pCriMGET_9-12a システムを用いたノックインマウス作出法