超分子構造学分野
Research Center for Infectious DiseasesLab. of Supramolecular Structural Biology
研究内容
構造情報を基盤とした生命科学・創薬研究
超分子構造学分野では、クライオ電子顕微鏡法を中核技術として、ウイルスをはじめとする生体分子や細胞内超分子複合体の構造と機能を統合的に理解することを目指しています。単粒子解析法やクライオ電子線トモグラフィーを駆使し、生体内で自己組織化して機能する分子装置を原子・分子レベルからオルガネラ・細胞レベルまで一貫して解析します。さらに、得られた構造情報を基盤として、分子設計や創薬への展開を目指します。幅広い生命現象を対象に、学内外・産学との共同研究も積極的に推進し、最先端の構造解析技術を基盤に、生命科学・医学の発展に貢献します。
ボルナ病ウイルス1型 核タンパク質–RNA複合体のクライオ電子顕微鏡構造
ボルナ病ウイルス1型は、ヒトを含む哺乳動物に致死性の脳炎を引き起こすことがあるマイナス鎖RNAウイルスで、エボラウイルスや麻疹ウイルスと同じモノネガウイルス目に分類されます。マイナス鎖RNAウイルスは、ゲノムRNAを核タンパク質で保護したヌクレオカプシドを形成した状態で複製・転写を行いますが、その立体構造は長年明らかになっていませんでした。私たちはクライオ電子顕微鏡法を用いて、ボルナ病ウイルス1型のヌクレオカプシド様複合体の構造を解明し、核タンパク質の会合様式とRNA結合様式を詳細に明らかにしました。この会合様式やRNA結合様式は、他のモノネガウイルスのヌクレオカプシド構造とも比較可能であり、ウイルス複製装置に共通する形成機構やウイルス分子進化の理解につながります(Sugita and Hirai et al., Science Advances, 2026)。

狂犬病ウイルスリン酸化タンパク質が標的とする四量体pY-STAT1-DNA複合体のクライオ電子顕微鏡構造
STAT1は、インターフェロンなどの刺激を受けて活性化し、抗ウイルス遺伝子の発現を誘導する自然免疫の中心的な転写因子です。活性化したSTAT1(pY-STAT1)は二量体を形成するだけでなく、さらにN末端ドメインを介して四量体化することが知られていましたが、その立体構造は不明でした。本研究では、北海道大学・尾瀬農之博士らとの共同研究により、DNAに結合したSTAT1四量体のクライオ電子顕微鏡構造を初めて解明するとともに、狂犬病ウイルスのリン酸化タンパク質がこの四量体を選択的に標的として認識する機構を明らかにしました(Sugiyama and Minami et al., Science Signaling, 2025)。

