
DEPARTMENT OF Biosystems ScienceLAB. OF Stem Cell Genetics
幹細胞遺伝学分野
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教授 Professor
遊佐 宏介 |
MESSAGE FROM THE LAB
RESEARCH
CRISPRスクリーニング法をベースとした幹細胞・がん細胞研究
順遺伝学手法は、作業仮説を立てずに、着目している表現型に関わる遺伝子を網羅的に同定する方法で、非常に強力な研究手法です。私達の研究室では、ゲノム編集技術であるCRISPR-Cas9システムをほ乳類順遺伝学手法へ応用し、CRISPRスクリーニング法を開発しました。これにより、ほ乳類細胞における様々な生命現象に関与する遺伝子を効率よく同定することが可能となり、さまざまな研究分野で応用されて新しい遺伝子機能の発見に貢献しています。現在、私たちの研究室では、ゲノム編集を用いた様々な技術開発を継続すると同時に、(1) ヒト多能性幹細胞の未分化維持機構、細胞分化の分子基盤の解明、(2) がん細胞の増殖や薬剤感受性の分子機序解明の二つの研究領域を主たるテーマとして、特に核内転写制御機構に着目して研究を進めています。
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CRISPRスクリーニングの応用CRISPRスクリーニングでは、まずCas9発現標的細胞にCRISPR gRNAライブラリーレンチウイルスを感染させ全遺伝子変異細胞ライブラリーを作製します。この変異細胞ライブラリーを用いて表現型解析を行いますが、解析法に基づいて大きく3タイプ(生存増殖、耐性感受性、ソーティング)に分けることができます。生存増殖や耐性感受性に関するスクリーニングは、がん研究で多く用いられる方法です。また、ソーティングを用いた場合、マーカー遺伝子の発現等に着目してスクリーニングを行うので、幹細胞研究はもちろん、幅広い生命現象に適用することができます。いずれのタイプでも次世代シーケンサー解析、統計解析を経て、ヒット遺伝子を同定します。 |
幹細胞研究ヒト多能性幹細胞(ES/iPS細胞)は未分化状態では一様にTRA1-60抗原を発現し(左)、多能性を長期に渡り維持します。この細胞を適切な培養条件下に置くと、例えばTuJ陽性神経細胞(右)へと分化します。これらの分化した細胞を病態研究や移植治療に用います。CRISPRスクリーニングを用いて多能性維持や分化に関わる遺伝子を明らかとし、その分子機能を解析します。この研究を通し、より高機能の細胞を効率よく作製する等、再生医療への応用への貢献を目指しています。 |
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がん研究がん(乳がん細胞株、写真)は、様々な遺伝子変異の蓄積によって発生します。これらの遺伝子変異により、がん細胞は生存・増殖にために特定の生物学的経路に依存するようになります。この依存性をCRIPSRスクリーニングによって明らかとし、がん治療の新しい治療法の開発につなげることができます。また、抗がん剤の効き目に関わる遺伝子を同定することも可能で、新しい併用薬の開発や治療効果が期待できる患者群の同定に応用することができます。 |